額縁のカバーガラスの交換手順と各素材について

額縁には中に入れる作品を守る目的で、ガラスやアクリルなどの表面カバーが付いています。このカバーは割れたりキズが付くことがあり、作品の見え方にも影響するときは交換しなければなりません。

額縁の表面カバーを自分で交換するときの手順と、表面カバーの素材、交換時に一緒にチェックして交換しておきたいものを紹介します。いつまでもお気に入りの額縁が使えるように、さまざまな情報を紹介します。

1.はじめに

額縁の表面カバーは従来ならガラスが主流でしたが、近年ではガラスのデメリットである重くて割れる点をフォローできる他の素材も増えています。単純に割れたときのリスクを軽減するほか、額縁の中の作品を守る効果も期待できるので、額縁を置く環境や作品の内容によってさまざまな素材が選ばれています。

表面カバーは、ひどく破損した場合や巨大な場合を除き、ほとんどのものが自分で交換できます。まずは自分で表面カバーを交換する手順から見ていきましょう。

1.額縁ガラスを交換する手順

額縁ガラスを交換するときは、なにもガラスが割れたときばかりではありません。ガラスは割れやすく、割れたときの破片が散乱しやすいので、交換と聞くと割れたことを思い浮かべますが、実際には額縁の中の作品の見え方や、移動のための軽量化、紫外線を浴びせたくないなど、さまざまな理由で交換されています。

一般家庭に置けるような額縁サイズで、1人で持ち運べる重さの額縁を対象に、表面カバーガラスの交換手順を紹介していきます。

1-1交換ガラスの採寸方法

額縁の交換ガラスの採寸は、額縁のサイズではなく内寸を測ります。額縁の裏面から留め具・背板を外して中の作品を取り出した状態で内寸法を測りましょう。一見すると難しそうに見える額縁ですが、裏面から背板を小さな留め具が4~6個程度で支えていることが多いです。

留め具も指で押したり立てたりできる柔軟性のあるものがほとんどなので、1ヶ所ずつ丁寧に留め具を外してみてください。額縁に初めて触るという方でも、意外と簡単にここまで進められますよ。

内寸法は縦と横を慎重に測り、簡単にメモしておくことをおすすめします。交換する表面カバーを購入するときは、採寸した内寸法よりも縦横各マイナス2ミリの寸法でお求めください。実際の表面カバーも額縁の内寸法よりも、各2ミリずつコンパクトサイズになっています。

これは表面カバーの交換がスムーズにできる寸法で、どの額縁にも共通している採寸のルールのようなものです。もしも採寸することが困難な場合は、販売店に額縁のサイズを伝えるとジャストサイズの表面カバーサイズがわかるでしょう。

1-2額縁やフォトフレームの交換手順

交換する表面カバーが手元に届いたら、自分で交換してみましょう。

1.額縁の裏面を見て、留め具を外して背板と中の作品を取り出します。
2.表面カバーとして使用しているカバーを外します。このとき、表面カバーの素材がガラスのときは、割らないように注意してくださいね。
3.準備した表面カバーをそっと額縁の中におき、サイズが合うように調整します。
4.作品を置き、背板をしずかに置き、留め具を丁寧に止めれば終了です。

額縁の表側から作品の位置や表面カバーの状態を確かめてみてください。特に問題がなければ交換完了です。

2.額縁の表面カバーの素材について

額縁の表面カバーにはこれまではガラスを中心に使われてきましたが、近年では開発が進んで軽量かつ割れにくい素材がたくさん登場しています。各素材にはメリットもデメリットもあり、一概にどの素材が優れているとはいえませんが、それぞれの個性を生かした使い方をすることでメリットを最大限に生かせるでしょう。

2-1ガラスの特徴

ガラスは割らなければほとんど劣化しないとも言われる素材で、額縁の表面カバーには多く使用されてきたものです。

ガラスのメリット

・キズがつきにくい
・アクリルよりも安い
・アクリルよりも平面性に優れた表面

ガラスのデメリット

・重さがある
・衝撃に弱く割れると破片が散乱する
・大きいサイズには不向き
・緑がかったガラス色をしているので繊細な色を楽しむ作品には不向き
・室内における紫外線カット率は約30%

ガラスは、他の素材に比べて厚みもあり、薄い額縁には向かないことがあります。日本国内ではガラスを使用した額縁は減少傾向ですが、ガラスならではの味のある表面カバーはコンパクトな額縁が適しています。

また、静電気の影響を避けたい場所や作品、汚れても簡単に清掃したい場合などにも適した素材です。

2-2アクリルの特徴

アクリルは表面カバーの素材としてはもちろん、従来のものよりも軽量化して透明性を生かしたいケースにも多く用いられています。

アクリルのメリット

・軽い(ガラスの重さの半分程度)
・割れにくい
・透明度が高い
・室内における紫外線カット率は約90%
・作品の日焼けを防ぐ

アクリルのデメリット

・ガラスよりも高価
・布でこすった程度でもキズが付きやすい
・静電気を帯びやすい
・熱に弱く、膨張や変形することがある

アクリルは額縁の中の作品を紫外線から守るにはとても良い素材です。また軽くて薄く、割れにくいので、表面カバーとして安全性が高く扱いやすいです。額縁業界ではガラスの上位互換品といった位置づけで扱っており、近年ではこのアクリルを使った額縁が増加しています。

2-3UVカット強化型アクリルの特徴

アクリルはもともと紫外線カット率が90%程と高いのですが、さらに紫外線カット率を98%まで強化したものがこのUVカット強化型アクリルです。通常のアクリルの特徴に加えて次のような特徴があります。

UVカット強化型アクリルのメリット

・紫外線カット率が非常に高い(約98%)

UVカット強化型アクリルのデメリット

・通常のアクリルよりも高価
・通常のアクリルに比べて若干黄色がかっている

通常のアクリルの紫外線カット率を約10%近く高めたものです。通常のアクリルとの違いをどのように感じるか、どのように使用するかは作品によるところが大きいでしょう。絶対に紫外線を浴びせたくないというデリケートな作品に向いている素材です。

2-4透明シート

透明シートは、見た目はアクリルに似ていますが全く別の素材です。

透明シートのメリット

・安い
・薄さを選べる
・フィルムに近いものまで薄さのラインナップが豊富

透明シートのデメリット

・アクリルに比べて若干透明度が劣る
・シート状なので平面性が劣り、場合によってはたわみなどが生じる
・紫外線や熱に弱く変形することがある

透明シートは、安く使用できる面が評価されてポスターフレームなどに採用されています。やや一般家庭では浸透しにくい印象でも、今後の需要が伸びる可能性があります。薄型の額縁を使用する場合や、表面カバーの厚みが指定されているような額縁に向いています。

2-5保存額装用最高級アクリル

額縁表面カバーの最高峰とも言われている素材です。

保存額装用最高級アクリルのメリット

・紫外線を99%カットできる
・アクリルでも摩擦に強い
・帯電防止効果がある
・見る人や室内の映り込みを軽減できる
・基本アクリルなので安全性が高く安心して使用できる
・作品保護ができケアが簡単
・カバーがないと錯覚するほど美しい見た目

保存額装用最高級アクリルのデメリット

・非常に高価

保存額装用最高級アクリルは、作品の保護や鑑賞には最高の条件が揃う素材です。しかし、300ミリ×300ミリのコンパクトサイズでも約40,000円前後と高いことが響きます。通常のアクリルが主流になりつつあるので、将来的にはコストダウンも期待できますが、まだしばらくは高価な表面カバーの代名詞になりそうです。

2-6カバー無し

額縁の中には表面カバーを付けないで、作品をむき出しにして額に入れることがあります。額縁の表面カバーの素材の紹介としては若干異なりますが、むき出し額装について触れておきましょう。

カバー無しのメリット

・油絵の額装にぴったり
・アクリル画にも向いている
・光の反射を嫌う写真の展示などに最適
・作品の生の状態を鑑賞したい場合に向く
・大きなサイズでもその分の表面カバーの準備が要らない

カバー無しのデメリット

・紫外線をカットするものがないため、ダメージを受けやすい
・ダイレクトに汚れやすく、何かぶつかるようなことがあれば破損のリスクが高い

カバー無しの場合は、ほとんどが油絵などを額装する場合です。また油絵のように表面が盛り上がるか立体的な作品もカバーを付けないことがあります。大きな作品になるほどカバーを付けないケースが増える傾向です。

3.額縁のガラス交換時に一緒に交換したいもの

額縁の表面カバーを交換するときは、なるべく額縁に付帯している各部品も一緒に交換しておきたいものです。作品を長く楽しむ場合、額縁はその期間ずっと壁などに吊るしておくもののため、気づかないうちに傷みがでることもあるからです。

通常なら多少の揺れではほとんど落下しませんが、部品に異常があれば落下の原因になることもあります。そういった万が一の事故を未然に防ぐためにも、額縁の表面カバーの交換時に一緒に点検してみませんか?

3-1金具類

額縁を壁に飾るとき、壁に金具を取り付けて額縁を固定または吊るすことが多いです。このときに使われる金具類は、額縁を眺める時間が長くてもほとんど気にすることがない存在のため、額縁の表面カバーを交換するときに一緒に点検することがおすすめです。

金具類にはさまざまなものがあります。石膏ボードにも取り付けられるフックや、額縁を吊り下げるための額吊り金具、各種ワイヤーや、ピクチャーレールなどが代表的です。それぞれの金具たちは、安いものでは80円台~販売されており、平均的に500円前後で購入できます。

3-2吊紐

額縁を吊るには紐やワイヤーが必要です。ワイヤーは金具のところで紹介したので、ここでは吊紐について紹介しますね。吊紐は徐々に劣化していくもののため、定期庭な点検や交換をおすすめします。額縁がいきなり落ちた!などの事故の原因第1位が吊紐の劣化で、吊紐が切れることで落下します。

吊紐は通常、額縁に使用するときは二重にして縛るものです。そのため新しく交換用の紐を購入するときは、自分のイメージよりも長めに購入する方が良いでしょう。また、既製品の額縁にはあらかじめ吊紐が付帯していますが、それを参考に購入することも良い方法です。

3-3イーゼルや額立て

屋内で玄関や机、テーブルなどの上に額縁を置きたいときに使用するのが、イーゼルや額立てです。よく床の間に大きな絵皿が飾ってありますが、その皿を支えているものと同じ働きを担っています。

商品名がイーゼル・スタンド・額立てなど、形や素材、サイズにより変化しますがどれも同じく額縁を支えるものです。スチール製やアクリル製のコンパクトなものは比較的安く購入でき、木製のものになるとやや高い傾向です。

高さ45センチ前後の額縁に対応するもので、スチール製では約3,000円、木製では約4,500~6,500円になる傾向です。木製の場合、素材や塗装などでも価格が変動します。さびや亀裂があるときは、早めに交換する方が良いでしょう。

4.飾るものにより額縁の種類は変わる

額縁は多種多様な種類がありますが、中にどんな作品を入れるのかによって選択すべき額縁は変わります。作品の種類ごとに適した額縁を紹介しますね。

4-1紙類の薄い品物用の額

紙・写真・布・手ぬぐい・薄めのボード類など、薄い作品を飾れる額は、一般額やデッサン額などと呼ばれています。額縁のサイズ・カラーバリエーション・デザイン性がとても豊富で、表面カバーはガラスよりアクリルが多く使用されています。

額縁の素材は木製をメインとしながらも、樹脂製のものも見られます。単色仕様のシンプルな額縁から、まるで金属かと思わせるようなメタリックの輝きを持つもの、パステルカラーのもの、高低差がありルイ調とも言われる豪華なもの、挙げればきりがないほど多くのカラーとデザインがあります。

4-2油絵や日本画にぴったりの額

油絵におすすめの額縁は、一般的に油絵額縁と呼ばれています。ほとんどの額縁が油絵をすっぽりとはめ込む構造になっているので、サイズ選びが非常に重要です。裏面からはめ込むだけとはいえ、サイズが合わないと全く使えないので慎重な採寸が必要です。

表面カバーの素材はガラス・アクリルがだいたい半々程度に使用されています。ですが、縦か横の一方が500ミリを超えるサイズになるとアクリルの方が多くなる傾向です。価格帯はガラスとアクリルで比較すると、だいたい2,000円前後の開きがあり、重さは400グラム前後の開きがあります。

日本画におすすめの額縁は日本画額縁と呼ばれ、日本画は表面に凹凸がないことから表面カバーはアクリルが多く使用されています。また額縁の素材はアルミや樹脂製が多く、油絵額縁に比べて見た目はシンプルなものが豊富です。

4-3アートボックス

立体的な作品を入れたいときにおすすめなのがアートボックスです。アートボックスは背板と表面カバーの間が深いため、マスコットのように厚みがあるものも入れられます。感覚的には箱のふた部分が表面カバーになっているようなもので、表面カバーの素材はガラスもありますがアクリルの方が多いです。

アートボックスが使用されるシーンで代表的なのは、ウエルカムボードです。ちょっとした細工を施してウエルカムボードにすると、目に留まりやすくなります。価格帯はサイズや素材により大きく異なりますが、一例として、木製の額縁・表面カバーはアクリル仕様・約400ミリ×500ミリの大きさなら8,500円前後になります。

4-4その他の額

額縁はとても豊富な種類と用途があり、一般額・油絵&日本画額・アートボックスの他では、さまざまな額縁が存在しています。

・賞状額
・写真額&写真パネル
・ポスター額
・色紙額
・手ぬぐい額
・ユニフォーム額
・書道額&水墨画
・遺影額

その他数えきれないほどの種類があり、入れる作品により名称も大きさも表面カバーの素材も変化していきます。

まとめ

額縁とひと口に言っても、作品に合う額縁を選ぶことがとても大切です。どんな額縁が最適なのか、それは作品の厚みや立体かどうか、賞状や記念品などのようにある程度のジャンルから探すことができます。

表面カバーの素材についても落下の心配がないならガラス、軽くて上部なものが良いならアクリルと、好みにより使い分けることも良い方法です。また、表面カバーはもちろん、中の作品は季節やイベントごとに別の物と交換すると、より一層作品を楽しめますね。

額縁と作品を最大級に楽しめるよう、さまざまな工夫や配慮をしていきたいですね。

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