カーテンウォールとは? その種類と特徴を徹底解説!

超高層ビルなどによく使われている「カーテンウォール」をご存知ですか? 建築関係の仕事に携わっている人や建築を学んだことがある人、建築が好きな人には当たり前の知識かもしれませんが、そうでない人は”言葉は聞いたことはあるけど、よく知らない”という人も多いのではないでしょうか。ここでは、カーテンウォールとは何か、どんな種類があるのかなど、カーテンウォールについてご紹介していきます。

①カーテンウォールって何?

カーテンウォールを直訳すると、「カーテンの壁」となります。実はこの言葉はカーテンウォールの特徴を端的に示しており、まるでカーテンのように建物から吊るされていたり、建物に貼り付いている壁のことをいいます。壁そのものは建物の荷重を直接受けないことから「非耐力壁」や「帳壁」とも呼ばれ、軽量で取り外しができるという特徴があります。言ってみれば、ビルの外壁がパーテーション(間仕切り)のようなものでできているようなものですね。主に高層建築物の外壁に採用されており、ガラス張りの超高層ビルのほとんどはカーテンウォール工法で造られています。もう少し詳しく説明していきましょう。 カーテンウォールが登場する以前の鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)の高層建築は、コンクリート製の外壁が鉄骨・鉄筋とともに建物の荷重を支え、さらに地震や風圧の力を防ぐ、文字通りの”壁”となっていました。しかし、建物の高層化がさらに進むと、外壁自体の重量が風圧や地震によってかかる力の負担になることが課題となりました。
そこで、開発されたのがカーテンウォール。建物の自重と建物にかかる荷重は、柱、梁、床などで支え、外壁はその負担から逃れ、軽量化して構造物に貼り付けるという考え方です。これにより、地震の際に、揺れに抵抗するのではなく、揺れを吸収することで建物が壊れるのを防ぐ柔構造を採用しても、歪みの影響が少ないため、ガラスが道路などに飛散するリスクを減らすこともできるようになりました。
また、カーテンウォールの登場により、建物の外壁にアルミやガラス、セラミックといったさまざまな素材が使われるようになり、デザイン性に富んだ、個性豊かなファサードを持つ高層建築物が誕生するなど、高層ビルそれぞれのイメージを左右する大きな要素ひとつになっています。 カーテンウォールはいくつかの部材が組み合わされてできています。カーテンウォールの構成材を大別すると、表面材と機能材に分けることができます。表面材とはビルの外観をつくる素材で、ガラス、アルミなどの金属、石材などがあります。一方、機能材には、風圧などカーテンウォールにかかる力を建築躯体に伝えるための構造部材、カーテンウォールと建築躯体をつなぐファスナー部、そのほか、気密材、シーリング材、断熱材、耐火材などかあります。
これらの構成要素がすべて組み合わさって、カーテンウォールが造られています。

②カーテンウォールの歴史と代表的な建造物

カーテンウォールの概念そのものは比較的古くからありましたが、実際の建物に採用されたのは19世紀のヨーロッパです。1851年に建造されたイギリス・ロンドンの水晶宮(クリスタルパレス)が世界初のカーテンウォールといわれており、鉄骨構造にガラスを組み合わせたプレハブ工法の先進的な建物でした。ちなみに1851年は、第1回の万国博覧会がロンドンで開催され、アメリカで世界初の電車が走った年。日本は江戸時代の嘉永3年で、第12代将軍・徳川家慶の時代でした。
現代的なカーテンウォールを初めて本格的に採用したのは、1951年の国連ビル(アメリカ・ニューヨーク)といわれています。ル・コルビュジェとオスカー・ニーマイヤーが原案を作り、ウォレスK・ハリソンが設計した国連ビルは、アルミとガラスの美しいカーテンウォールが印象的です。その後、ステンレスを使ったリーバ・ハウス(アメリカ・ニューヨーク)、ブロンズを使ったシーグラムビル(アメリカ・ニューヨーク)など、さまざまな素材を使ったカーテンウォール工法の高層ビルが建てられました。 日本におけるカーテンウォールの建造物は、1954年の水晶殿(静岡県熱海市/世界救世教いづのめ教団)、1960年の旧・飯野ビル(東京都千代田区)、1962年の日軽ビル(東京都中央区)、1964年のホテルニューオータニ(東京都千代田区)、1965年の山口銀行本店(山口県下関市/日本建築学会賞受賞)などに端を発します。また、日本初の超高層ビルとして1968年にオープンした霞が関ビルディング(東京都千代田区/霞が関三井ビル)にも外壁にアルミのカーテンウォールが採用されています。当時はそれぞれの建物の斬新な外観に多くの人々が驚き、未来を感じたのではないでしょうか。
近年の建物では、カーブを描くガラスのカーテンウォールが美しい「コレド日本橋」でお馴染みの日本橋一丁目ビルディング(東京都中央区)、大きなガラスのカーテンウォールが開放感を演出する丸の内オアゾ(東京都千代田区)、緑色のガラスカーテンウォールが目を惹く汐留シティセンター(東京都港区)などが印象的です。

③カーテンウォールの特徴

 

◎建築物が軽量化できる

カーテンウォールの場合、柱や梁などの骨組みと土台で建物を支え、外壁は骨組みに吊るしたり、貼り付けたりするだけですので、それほど頑丈にする必要がありません。そのため、外壁を大幅に軽くすることができ、超高層ビルのように何重にも積み重ねても、建物全体の重量を軽くでき、建物自体への負担をかけずに済むというわけです。

◎プレハブ工法で建設しやすい

カーテンウォールは、骨組みに外壁をはめ込んでいく造り方をするため、外壁工事の際、建物の周囲に足場を組む必要がありません。そのため、施工しやすく、工期を短縮でき、足場設置のコスト削減にもなります。
カーテンウォールはあらかじめ工場である程度まで製作した部材を使い、現場では簡単な施工で済むプレハブ(工場生産)工法で造られます。なかでも、現場で構成材を組み立てて施工するノックダウン方式と、工場でほとんど完成品を造り、現場では順番に取り付けるだけのユニット方式があります。

◎地震対策の柔構造に対応

サッシの寿命は一般的に約20年~30年といわれていますが、近年のサッシは性能が向上しており、サッシ自体が原因で歪んでしまうということは少なくなっています。しかし、長年の使用で戸車やサッシレールなどが摩耗してしまったり、地震や台風などの自然災害によってサッシに急激な負担がかかって建付けが悪くなり、その影響がサッシの歪みに現れることもあります従来のように外壁が建物を支えている構造では、地震が起きた際に外壁が歪み、その影響で窓ガラスが割れ、飛散するリスクがありました。しかし、カーテンウォールにすることで、地震の揺れとともにガラスも揺れて地震の力を吸収する柔構造を採用しやすいため、ガラスの飛散を軽減できる可能性が高くなっています。

◎デザインの自由度が高い

全面ミラーガラスの超高層ビルなど、カーテンウォールにはアルミ、ガラス、チタン、セラミックなどのさまざまな素材が使用できます。また、開口部を大きく採ることができるなど、デザインの自由度が高く、個性豊かな設計を可能にしています。また、カーテンウォールの素材や組み方を工夫することにより、遮光性や省エネ性などといった機能面の向上も可能になります。

④カーテンウォールの種類

 

◎素材による種類

建築物の外壁は一般的にガラス製の窓とさまざまな素材で造られた壁によって構成されています。カーテンウォールの場合も同様ですが、壁部分にどのような建築材料を使うかによって2種類に大別できます。ひとつは、あらかじめ工場で造られたコンクリートパネルを壁に使用する「glass(プレキャストコンクリート)カーテンウォール」。もうひとつは、金属を使用する「メタルカーテンウォール」です。
メタルカーテンウォールに使用される金属材料はアルミニウム、スチール、ステンレスなどがありますが、近年はアルミニウムが主流になっていることから、メタルカーテンウォールではなく、「アルミカーテンウォール」というカテゴリーで呼ばれることも増えています。カーテンウォールに使用されるアルミ材は表面処理が施され、耐久性、耐食性、耐候性など機能面を強化するだけでなく、着色したり、艶の有無などを調整して、デザインの幅も広げています。 ほかにも、glassカーテンウォールとメタル(アルミ)カーテンウォールから派生して、さまざまなタイプのカーテンウォールが登場しています。たとえば、プレキャストコンクリートと金属部材を組み合わせて使用する「複合カーテンウォール」のほか、アルミパネル、アルミキャスト、アルミ+ガラス、ハニカムアルミパネル、チタンパネル、セラミックパネル、ガスケットなどがあります。
ちなみに全面ガラス張りのカーテンウォールは、かつては金属フレームでガラスを固定するため、ほとんどがメタルカーテンウォールが採用されていましたが、最近の加工技術の進展により、金属フレームを使わず、ガラスに直接穴をあけて金具で固定する「ガラスカーテンウォール」が増えています。

◎工法による種類

カーテンウォールの取り付け方によっても種類が異なります。これらの工法は、デザイン、施工のしやすさ、地震や風圧の処理などによって総合的に判断されます。 ・マリオン(方立)方式
最もポピュラーな工法が「マリオン方式」です。これはマリオン(方立)と呼ばれる垂直の桟を天井(もしくは梁)と床に架け渡し、そこにガラスやスパンドレルパネル(壁パネル)をはめ込んでいく方式です。
当初、この工法を採用すると、マリオンの垂直線が目立つデザインになってしまうという特性がありました。しかし、近年はマリオンの前にガラスが取り付けることができる「バックマリオン方式」や、マリオンに相当する部材を水平に通して、そこにガラスやスパンドレルパネルをはめ込む「無目通し(トランザム)方式」が登場し、透明建築とも呼ばれるシームレス全面ガラス張りのビルなど、デザインの幅が広がっています。 ・パネル方式
マリオン方式を並ぶ代表的な工法です。パネルを並べてビルの大きな壁面を造るというもので、工事は非常に簡単になりますが、パネルのつなぎ目をどのように処理するかが課題になります。1枚のパネルにひとつの窓を取り付けるデザインが一般的なため、ひとつひとつの窓が離れたポツ窓のファサードになりがちです。
また、パネルを組み合わせて壁を造る際、一部を空けておき、そこにガラスの入った金属フレームをパネルと同様に組み合わせる方法もあります。 ・柱・梁カバー方式
柱や梁といった骨組みにカバーをするようなパネルを組み合わせ、空いた空間に窓ガラスを組み込むという方式です。柱と梁のタテヨコの線が強調されたファサードデザインが特徴です。たとえば、三井住友銀行の本店ビルディング(東京都千代田区)の下層階部分は花崗岩が打ち込まれたglassカーテンウォールを柱・梁カバー方式で建てており、花崗岩の重厚なグリッドが印象的です。このほか、現在建造中のオービック御堂筋ビル(大阪市中央区)など、たくさんの実例があります。 ・スパンドレル方式
梁の前面と腰壁の部分をパネルで構成し、上下のパネルの間に窓ガラスを入れる工法です。窓が横に連なっているように見えるファサードデザインが特徴で、最近の高層ビルによく見られる工法です。

⑤カーテンウォールに求められる性能

超高層ビルの外壁に使用されるカーテンウォールは、軽量で取り扱いやすい一方で、さまざまな性能が要求されます。カーテンウォールに限らず、高層建築物の外壁に求められる重要な性能には以下があります。 ・耐風圧性
風が吹いて建物にぶつかると、建物を押す力が加わり、風が裏に回ると今度は渦になって建物を引っ張ります。これが風圧です。この風圧にどれだけ耐えられるかが耐風圧性になります。台風によってビルのガラスが割れた、壁が壊れたなんてことになったら大変ですから、耐風圧性はとても重要です。 ・層間変位追従性
カーテンウォールの耐震性といってもいいでしょう。高層ビルの場合、地震や強風などによってビルが揺れると、上階と下階では揺れ方に差が生まれます。つまり、ビルの中のあるフロアのオフィスを真横から見ていたとしたら、普段は長方形に見える空間が、地震などで揺れると平行四辺形に見えるわけです。この水平方向の差(ズレ)を層間変位といい、このズレにどれだけ耐えられるかが層間変位追従性なります。 ・水密性
強い台風などの時に、どれくらいの風圧まで雨水の浸入を防げるかを表す性能です。 ・気密性
外壁の隙間からどれくらい空気が漏れるかを表す性能です。気密性は断熱性や遮音性にも関係が深く、冷暖房効率にも影響します。 ・遮音性
室内から室外へどれだけ音が漏れるか、あるいは室外から室内へどれだけ音が侵入するかを表す性能です。 ・断熱性
熱の移動をどれだけ抑えられるかを表す性能です。冷暖房効率に大きく影響します。 ・耐久性
ご存知のように、どれくらいの期間で劣化するかを表す性能です。前述したようにカーテンウォールにはさまざまな構成部材が使用されているため、ひとつひとつの部材に耐久性の高いものを使用することが、結果的にカーテンウォール全体の耐久性を高めることにつながります。 そのほか、耐火性、耐熱性、結露の防止、金属音の防止、避雷対策など、さまざまな要求性能をクリアして、カーテンウォールはできています。

まとめ

この記事では、カーテンウォールの特徴や種類について紹介してきました。カーテンウォールは、主に超高層ビルなどに使用される外壁のことで、カーテンのように非常に軽量で建物にあまり荷重をかけないという特徴があります。また、取り付けも簡単で、足場を設置しなくても施工できることから、工期の短縮やコストの削減にも貢献します。耐震の柔構造にも対応し、地震時にも外壁の歪みを減らすことで、ガラスの飛散を極力軽減することができます。また、外壁の素材にはさまざまなものが使用できるほか、工法に応じて窓ガラスのレイアウトも比較的自由にできるため、カーテンウォールのデザインが建物のファサードに個性を与え、引いてはビル全体の印象を決めることができます。
街を歩けば、多くの高層ビルにカーテンウォールが使われています。趣向を凝らした外観(ファサード)の高層ビルは、恐らくカーテンウォールを採用しているものと思われます。ビルに近づいてみて、どんな素材が使われているのか、どんな工法が採用されているのか、そして、デザインはどうなっているのかなど、ご覧になってみてはいかがでしょうか。ひとつひとつのビルに個性があってなかなか興味深いですよ。

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