歪んだサッシの調整方法と交換方法
自宅のサッシが開閉しづらい、サッシからすきま風が入ってくるような気がする・・・なんてことはありませんか? もしかすると、それはサッシが歪んでいるせいかもしれません。ここでは、サッシの歪みの原因とご自身でできる調整方法、そして、サッシそのものの交換方法についてご紹介していきます。
①サッシとは・・・
「サッシ」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか? 大きな窓? 窓枠? サッシの歪みについてご説明する前に、まずは「そもそもサッシってなんだろう」というところからお話していきたいと思います。
普段、何気なく使っている「サッシ」という言葉、本来の意味をご存知ですか? サッシは英語のsashから来た言葉で「サッシュ」とも呼ばれます。サッシはもともと「窓枠」あるいは「窓枠用の建材」のことを指します。しかし、その後、特に金属製の窓枠を「サッシ」と呼ぶようになり、近年は窓枠、框、ガラスの総称として「サッシ」と呼ぶ人も増えています。
ちなみに窓やサッシを製造しているメーカーでは、窓枠と框と鍵などの付属部品を総称して「サッシ」と呼び、サッシにガラスが組み合わせることで「窓」と呼んでいるそうです。
②サッシの種類
サッシには素材によって次のような種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
◎アルミサッシ
日本で最もポピュラーなサッシがアルミサッシです。軽量で開け閉めしやすく、耐久性、耐候性、防火性にも優れています。また、お手入れしやすく、種類も豊富なので、部屋の雰囲気に合わせてカラーやデザインを選ぶことができます。弱点としては、熱伝導率が高いために断熱性が低く、冷暖房効率があまり良くなく、結露が起こりやすいという点が挙げられます。
◎スチールサッシ
アルミサッシが普及する前までは、鉄製のスチールサッシがよく使われていました。しかし、重量が重く、開け閉めしづらく、結露すると錆びやすいことから、一般家庭ではほとんど使われなくなりました。その一方で、鉄の重厚感が独特の風合いを醸し出しており、防火性にも優れていることから、商業施設のデザイン性を重視した室内窓等でスチールサッシを使用しているケースが多く見られます。
◎樹脂サッシ
塩化ビニール樹脂を主原料として作られたサッシです。熱伝導率が低く、断熱性に優れており、冷暖房効率を高めてくれるほか、結露をほとんど起こしません。複層ガラスと樹脂サッシを組み合わせると、一般的なアルミサッシよりも約3倍の断熱性能を発揮するともいわれています。しかも、気密性にも優れており、遮音効果も期待できます。また、加工や着色がしやすいため、窓の形状や部屋のイメージに合わせてデザインすることも可能です。
そんないいことずくめの樹脂サッシですが、強度は低く、強度を高めるためには厚みが必要になり、そうすると開閉を重く感じることがあります。また、紫外線に弱いため、陽当たりの良い場所に使用する場合、メンテナンスを行わないと、劣化が早まることがあります。アルミサッシに較べて価格が高いということも弱点のひとつかもしれません。とはいえ、高い断熱性と気密性はサッシの機能として大きなメリットで、近年はアルミサッシのインナーサッシとして利用する人が増えているほか、北海道をはじめとする寒冷地では窓のほとんどが樹脂サッシを採用しています。
◎木製サッシ
木ならではの温かみや質感が魅力的で、ワンランク上の空間づくりを演出してくれる木製サッシ。熱伝導率が低く、断熱性がとても高いという特性があります。そのため、外気の影響を受けにくく、夏は涼しく、冬は暖かく、結露もしにくいというメリットもあります。昔は学校の校舎などにも使用されていましたが、当時の木製サッシは気密性や耐火性が低かったため、次第に取扱いやすいアルミサッシに代わっていきました。現在の木製サッシは気密性を高める工夫がされており、高級サッシのひとつとなっています。
木製サッシの弱点は耐久性です。雨にさらされていると劣化が早まったり、長年使い続けていると摩耗していきます。また、傷つきやすく、数年に一度は塗装を塗り直す必要があるため、メンテナンスにもコストがかかります。
◎複合サッシ
異なる素材を組み合わせたものが複合サッシです。たとえば、室外側は軽量で扱いやすいアルミサッシにし、室内側は断熱性の高い樹脂サッシにするなどといった、それぞれの素材の良さを組み合わせています。
③サッシの歪みとその原因
では、いよいよサッシの歪みについてご紹介していきましょう。長年サッシを使用していると、開け閉めしづらくなったり、閉めているはずのサッシからすきま風が入るようになったり、クレセント錠がかけづらくなることがあります。そんな時は窓を閉めた状態で、窓の四隅をチェックしてみてください。もし窓(サッシ)に隙間ができていたら、サッシが歪んでいる証拠です。では、サッシの歪みは何が原因なのでしょうか。
◎木材の収縮
サッシの歪みの原因としてよく見られるのが、住宅に使用されている木材の収縮です。特に築年数の経った木造住宅はほとんどの場合、木材が収縮してサッシに歪みが生じます。鉄筋コンクリートや鉄骨の住まいであっても、内装等に使用されている木材が収縮し、サッシに影響を与えるケースもあります。
これらの現象はある程度であれば当然であり、サッシメーカーもそのあたりのことは考慮してサッシをつくっており、調整することが可能ですので、心配することはありません。調整方法は次の項「④サッシの調整方法」でご紹介します。
◎サッシの寿命・故障
サッシの寿命は一般的に約20年~30年といわれていますが、近年のサッシは性能が向上しており、サッシ自体が原因で歪んでしまうということは少なくなっています。しかし、長年の使用で戸車やサッシレールなどが摩耗してしまったり、地震や台風などの自然災害によってサッシに急激な負担がかかって建付けが悪くなり、その影響がサッシの歪みに現れることもあります。
◎不同沈下
サッシがまったく開閉できないくらいの重症の場合、家そのものの地盤が傾いている可能性が疑われます。住宅が全体的に沈下するのではなく、不揃いに一方向に傾いてしまうことを「不同沈下」といいます。これはもともと軟弱な地盤の上に住宅を建ててしまったことが原因であることが多く、稀に地下水を汲み上げ過ぎて不同沈下を起こしてしまったというケースもあります。不同沈下の場合は、サッシの開閉だけでなく、壁にひび割れができたり、排水しにくくなったり、床が大きく傾くなど、住宅のさまざまな場所で不具合が起きることがあります。これを放っておくと、ここで暮らす人々の健康に悪影響を及ぼすこともあります。不同沈下が疑われる場合は、専門業者に依頼して、調査してもらうようにしましょう。
なお、築年数の浅い住宅で、地震などの影響がないにも関わらず、サッシに5mm以上の大きな歪みがある場合は、施工不良が考えられます。そんな時は施工業者に連絡するなどして、早めに対策することをおすすめします。
④サッシの調整方法
上記でご紹介したように、サッシメーカーではある程度の歪みはあらかじめ考慮した上でサッシをつくっています。そのため、地盤以外の原因で2〜3mm程度の歪みであれば、ご自身で比較的簡単に調整することが可能です。
◎戸車の高さを調整
窓の下の床に接する部分には、サッシレールを走行することでサッシをスムーズに開閉させる、「戸車」と呼ばれる車輪状の部品が付いています。この戸車の高さを調整することで、歪みを調整することができます。用意するのはプラスドライバー1本だけです。
【調整方法】
窓を開けて、サッシ戸の側面の下のほうを見てください。縦に穴が2つ並んでいるのがわかるでしょうか? ゴムキャップのようなものが嵌まっていることもありますので、その際はゴムキャップを外してください。2つの穴のうち、大抵の場合、下の穴が戸車調整用の穴になります。その下の穴にプラスドライバーを差し込み、奥にある調整ネジの頭を探してください。ネジにプラスドライバーが嵌まったら、左右に回してみましょう。
右に回すと、戸車が下に出てきて、サッシを持ち上げようとします。左に回すと、戸車がサッシの中に入り込み、サッシが下がります。つまり、窓を閉めて四隅をチェックした時に、下のほうに隙間があれば、サッシが上がるように調整し、上のほうに隙間があれば、逆にサッシを下げるように調整します。
ここで注意したいのは、1枚のサッシ戸には左右2つの戸車が付いているのですが、サッシの把手のある側の戸車だけを調整し、鍵の付いている側はできるだけ触らないようにすること。鍵の付いている側の戸車まで動かしてしまうと、鍵の位置がズレてしまい、鍵かがうまくかからなくなることがあります。また、ドライバーで調整ネジを回す際は、隙間の状態を確認しながら、少しずつ行うようにしてください。回し過ぎると、調整ネジが外れてしまうことがあります。なお、サッシのはずれ止めが効いていると、サッシが上がりにくい場合があります。その際はサッシの側面上部にあるはずれ止めのネジを一旦緩めてから、再度行ってください。はずれ止めの緩め方については、サッシ本体にシールラベルとして貼られています。もしラベルがない場合はメーカーに確認してください。また、調整後ははずれ止めのネジを下に戻すことをお忘れなく。
なお、メーカーや製品によっては、微妙に調整ネジの位置や調整方法が異なる場合がありますので、うまくいかない時はお使いのサッシのメーカーを調べて、同社のホームページ等を参照するか、メーカーに問い合わせてみてください。 そのほか、サッシによっては引違い部分に気密性を調整するネジが付いているものがありますので、そちらも合わせて調整することで、よりスムーズにサッシを開閉できるようになります。また、クレセント錠がかかりにくい場合は、戸車の調整同様に、錠に付いている調整ネジでクレセント錠の位置を微妙に調整することができます。各調整方法は各メーカーのホームページ等でご確認ください。
⑤サッシの交換方法
上記の戸車の調整ではカバーできない大きな歪みやサッシの故障の場合は、サッシを交換することになります。従来の窓と同じものに交換するのももちろんいいのですが、滅多にないサッシ交換のタイミングですので、より機能的なサッシに交換して、住宅性能を高めるという選択もあります。
サッシの交換方法は、主に「カバー工法」と「内窓(二重窓)の設置」の2つの方法があります。 それぞれの交換方法と注意点などについてご紹介します。
◎カバー工法
窓枠は残したまま、古い窓(ガラス+サッシ)を取り外し、既存の窓枠に新しいサッシをカバーするように取り付ける方法です。床や壁を工事することなく、簡単に取り付けられるため、騒音やホコリもあまり発生しません。注意点は、既存の枠に新しい枠を取り付けるため、開口部(窓)がひとまわり小さなものになってしまうことです。
◎内窓の設置
既存の窓ガラスの内側に、もうひとつ新しい窓を取り付けて、二重サッシにする方法です。新たに設置する窓のサッシやガラスを機能性の高いものにすることで、断熱性や遮音性などを大幅に向上させることができます。デメリットとしては、窓を開閉する際に2回行わなければならないことや、単純に窓が2倍に増えるため、清掃等のメンテナンスの手間も2倍になることくらいです。
⑥サッシを交換するなら、ガラスにも注目
◎サッシに使用するガラスの種類 せっかくサッシを新しいものに交換するのであれば、多種多様な種類のあるサッシとガラスを選び直して、より快適な住まいづくりを目指しませんか? サッシの種類については上記「②サッシの種類」でご紹介しましたが、ここではまずガラスの種類についてご紹介しましょう。
ガラスは大別すると、通常の「一般ガラス」と、何かしらの機能を備えた「機能ガラス」に分けられます。それぞれのガラスの主だったものをご紹介します。
【一般ガラス】
・フロート板ガラス
一般的な透き通ったガラスのこと。透視性や採光性に優れています。 ・網入板ガラス
ガラスが割れても破片が飛び散らないように、金属の編目が入っているガラスです。耐火性に優れているのが特徴です。 ・型板ガラス
ガラスの片面に模様をつけた不透明なガラスです。視線を遮ることができる、いわゆる曇りガラスです。 ・すりガラス
フロート板ガラスの片面に珪砂などをすり付け、ツヤを消して不透明に加工したガラスです。
【機能ガラス】
・Low-Eガラス
ガラスの片面に特殊な金属膜を吹き付け、放射熱を防ぎます。いわば、ガラスのサングラスのようなもの。複層ガラス(ペアガラス)として使われることが多く、金属膜の特性により遮熱タイプと断熱タイプがあります。 ・複層ガラス(ペアガラス)
2枚もしくは3枚のガラスを重ね、その間に空気層を設けることで、断熱性を大幅に高めたガラスです。結露を起こしにくく、冷暖房効率を高めます。 ・遮熱型Low-E複層ガラス
室外側にLow-Eガラスを使用することで、夏は暑い陽射しを遮り、冬は室内の暖房熱を逃がさない、高い遮熱性を持つ複層ガラスです。紫外線カットの効果もあるので、直射日光や西日の当たる部屋の窓ガラスとして最適です。 ・高断熱型Low-E複層ガラス
室内側にLow-Eガラスを使用することで、断熱性や保温性を高めた複合ガラスです。室内の熱を逃さず、暖房効率を高めることから、北向きの寒い部屋や寒冷地の窓ガラスに適しています。 そのほか、複数枚のフロート板ガラスを重ね、ガラス間に特殊なフィルムを入れて圧着させることで防犯性や防災性を高めた「合わせガラス」、フロート板ガラスに特殊な処理を施すことで耐風圧強度を高めた「強化ガラス(安全ガラス)」、さらには「防犯ガラス」「防災ガラス」「防音ガラス」などもあります。
◎ガラスとサッシを効果的に組み合わせて
機能性の高いガラスと、それぞれ特徴の異なるサッシを上手に組み合わせると、目的に合わせてより高い効果が得られます。たとえば、寒冷地であれば、サッシは断熱性の高い樹脂サッシもしくは木製サッシ、ガラスは高断熱型Low-E複層ガラスを組み合わせることにより、大幅な断熱効果が得られ、冬場の暖房熱を逃さず、省エネにも効果的です。
このようにサッシとガラスの組み合わせによって、住宅性能を高めるさまざまな効果が期待できるというわけです。とはいえ、サッシもガラスもいろいろな種類のものがありますので、専門家に目的や予算を伝えて相談してみることをおすすめします。
まとめ
サッシが開け閉めしづらくなったり、サッシのクレセント錠がかかりにくくなったり、サッシの間からすきま風が入るようになった場合、それはサッシの歪みが原因かもしれません。でも、うろたえる必要はありません。サッシにはわずかな歪みであれば、リカバリーできる機能がもともと備わっており、ドライバーを使ってご自身で比較的簡単に調整することができます。サッシの開け閉めやすきま風が気になるようでしたら、ぜひ上記でご紹介した方法で戸車の高さやクレセント錠の位置を調整してみてください。うまくいけば、すきま風がなくなって、ぴっくりするくらいスムーズにサッシを開け閉めできるようになるはずです。
しかし、戸車調整をいくら行っても症状が変わらない場合は、サッシそのものが故障している、あるいは住宅を支える地盤に問題があることが考えられます。サッシの故障の場合は、サッシを交換することでケアすることができます。やむを得ずサッシ交換をされる場合は、サッシの種類やガラスの種類にも注目して、組み合わせを考えてみることをおすすめします。サッシとガラスによって、断熱、遮熱、防音、防犯などの機能が大幅に高まり、住まいの快適さまで変わってくるかもしれません。
サッシの調整はご自身でも可能ですが、サッシの修理や交換、地盤の調査は、なかなか素人ではできないものです。そんな時は専門業者に相談されることをおすすめします。