窓ガラスの種類とそれぞれの用途・機能
家づくりや家のメンテナンス、リフォームなどで意外に見落としがちなものが窓のガラスです。窓には「透明ガラス」や「型ガラス」などが多く使われていますが、どんなガラスでも良いというわけではなく、地震や台風などへの備えや盗難防止など、家を守るためにも欠かせない存在となります。
最新の構造や素材を採用した新しい家でも、窓だけは従来の透明ガラスのままというケースも少なくありません。どんな窓でも構わないという方もいますが、窓は非常時の避難口であり、室内を守ってくれるものですから、材質にはこだわっておきたいところです。
そこで今回は、窓に使われているさまざまなガラスの種類と特徴、防犯に高い効果を示す「曇りガラス」のメリットのほか、窓ガラスにこだわりたい理由などを含めて詳しく紹介していきたいと思います。
①窓ガラスの種類
窓に使われるガラスには、防犯性や遮光性など目的に合わせてさまざまな種類が存在しています。同じガラスでも機能や用途が異なることに注目してみてください。
1.1透明ガラス
透明ガラスはもっとも一般的なガラスです。透明なガラスで室内外を結んで、視線を抜けやすくして空間を広く見せる効果があります。外から室内を見たときには部屋が広く見えますし、室内から外を見ると庭が見渡せて一つの空間のように見えるので、狭い家でも狭く見えないといった効果が期待できます。透明ガラスは、まわりからの視線が気にならない場所であれば採用することができます。タワーマンションなどの高層階についても、周囲の視線がない場所であれば透明ガラスでも問題はなく、太陽光を直接採り込めるため室内が明るくなります。
また、お風呂場やキッチンのように壁に囲まれやすい場所についても、窓を設けて透明ガラスをはめ込むことで、圧迫感を取り除く効果が得られます。
1.2型板ガラス
型板ガラスは、目隠しのために使用されるガラスです。ドアの飾り窓やお風呂場など、視線を遮りたい場所に使われることが多く、表面に凹凸があり透明度が低いことが特徴的。隣の家と距離が近い場合、寝室にも採用されることがあります。
型板ガラスは特殊なローラーを用いてガラスに模様が描かれているため、ローラーの種類によってさまざまな模様が描けます。オリジナルの型板ガラスにすることもできますし、網入で強度の高い型板ガラスにすることもできます。
1.3曇りガラス(すりガラス)
曇りガラス(すりガラス)は、透明なガラスの片面に「金剛砂」を使い、ブラシで加工することで不透明度を高めている板ガラスです。
ザラザラとした質感の型板ガラスや、霧のように光を分散させるフロストガラスによく似ていますが、さらに細かく光を分散させるのが特徴です。間仕切りなどにも多く利用されており、家の中で視線を遮りたい場所に多く用いられます。
1.4強化ガラス
強化ガラスは、通常の板ガラスに熱処理を加えてから急速に冷却処理を行い、耐風圧強度を高めたガラスです。オフィスビルや病院など、人の往来の多い場所に使用されているガラスの多くが強化ガラスとなっていますが、台風や地震による被害を予防するために一般住宅でも強化ガラスを使うことができます。
通常のガラスの3.5倍から4倍ほどの耐風圧強度があるだけでなく、対加重性能も非常に高いため、テーブルの天板など家具にも使用されます。メリットの多い素材ではありますが、破損すると瞬時に全面破砕し、粒状の破片が広範囲に脱落することがあるため、取り扱いには注意が必要です。
1.5防音ガラス
防音ガラスは2枚以上のガラスで「中間膜」を挟んだ構造をしており、車の騒音などからくる振動を熱に置き換えて、音波を消すという原理を応用しています。外の音を高度にシャットアウトしてくれるので、往来が多い場所の窓に適しています。
防音ガラスを使えば室内の音が外に漏れ出す心配もなくなるため、楽器の演奏やペット、お子さんの声などがあっても安心です。
1.6防犯ガラス
防犯ガラスは、都市防犯研究センターが行う実験結果を元に、板ガラス協会が定義した基準を満たしているガラス製品のことです。2枚のガラスの間に厚みのある「中間膜」もしくは「ポリカーボネード板」を挟んで、バールなどの鈍器による打ち破りに高い抵抗力を発揮します。
外からの侵入者が、窓の鍵部分をドライバーなどを使って破ろうとしても、防犯ガラスの場合非常に時間がかかります。通常のガラスなら簡単に穴が空くところ、防犯ガラスには一定時間耐える力があるため、侵入を防ぐ効果が期待できます。
1.7遮光ガラス
遮光ガラスは別名「オーレクトガラス」とも呼ばれ、溶接作業で目を保護する際に使われるガラスです。一般家庭の場合、窓に遮光性能をもつフィルムを貼ることで、遮光ガラスを手軽につくりだすことができます。
遮光フィルムには遮熱・日照調整機能があり、太陽光を70%以上遮断する効果があるため、室内のエアコン温度を下げすぎず省エネにも貢献します。日差し特有のジリジリとした感覚がなくなり、快適に日光を採り入れることが可能です。
1.8抗菌ガラス
抗菌ガラスは、ガラスの表面に付着するさまざまな細菌やウイルスの繁殖を、光で抑制するという「光触媒技術」を使ったガラスです。抗菌・抗ウイルス効果のある銅系化合物と、有機物の分解作用がある光触媒膜を採用しているので、二つの相乗効果によってガラス面についたウイルスの多くを低減させることが可能。
大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、レジオネラ菌、黄色ブドウ球菌、多剤耐性緑膿菌、インフルエンザウイルスなど、深刻な感染症を引き起こす自然界の細菌にも対応できます。
1.9網ガラス
網ガラス(網入りガラス)は、ガラスにワイヤーを埋め込んだガラスです。「ワイヤー入りガラス」「防火設備用ガラス」などとも呼ばれ、火事に非常に強いガラスとして、オフィスや住宅などさまざまな場所に活用されています。
細い金網が巡らされているため、火災発生時にガラスが熱を受けて割れてしまっても、広範囲に飛散しないよう予防できます。
1.10耐熱ガラス
耐熱ガラスは、熱の膨張率を下げて、温度変化の影響を受けにくくしたガラスのこと。耐熱性の調理器具に多く利用されていますが、室内外の温度差が激しい場合や、火事の危険があり防火性を高めたいときには、一般家庭の窓に使うこともできます。万が一熱による影響を受けても割れにくく、経年劣化にも強い素材として注目されています。
1.11断熱ガラス
断熱ガラスは、熱を伝わりにくくする2枚のガラスを使った構造が特徴です。耐熱ガラスと混同されやすいのですが、ガラスを2枚重ねて使うため「複層ガラス」「ペアガラス」とも呼ばれています。
断熱ガラスは2枚のガラスの間に空間を設けて、ガスや空気などを含ませて熱移動を断ち切る構造になっています。このガラスを窓にはめ込むと、室内の熱が外に逃げにくくなり、さらに外の温度が室内に伝わりにくくなるため、冷暖房の効率がアップします。
1.12遮熱ガラス
遮熱ガラスは、太陽光から出る熱を遮ってくれるガラスです。窓から入ってくる太陽光をシャットアウトする場合、一般的にはカーテンを閉めて対応しますが、カーテンは室内にあるため、厳密には太陽光が一度部屋の中に入ってきてしまいます。
カーテンを占めて光を防いだように見えても、カーテンが外からの熱を受け止めて吸収しているため、室内の温度は高くなってしまいます。その点、遮熱ガラスはカーテンに吸収される前の段階で熱をシャットアウトできるので、室温を快適に保つことができます。
②曇りガラスや型板ガラスのメリット
次に、外からの視線を遮る機能を備えたガラスのメリットについて紹介していきます。
2.1直射日光を遮ってくれる
曇りガラスや型板ガラスには、表面に凹凸があるため、光を散乱させる機能によって強い直射日光が差し込む心配がありません。ペットや観葉植物などが室内にあり、直射日光を採り込みたくない場合には、部屋に曇りガラスを採用すると良いでしょう。
曇りガラスや型板ガラスは、適度に日光を通しつつも太陽光そのものは遮ってくれるので、シェードやカーテンを取り付けずに済むこともあります。部屋の景観を考えて、あえてカーテンを取り付けずにガラス窓だけにすることも可能。
2.2紫外線もカットしてくれる
曇りガラスや型板ガラスは直射日光の差し込みを防いでくれるので、太陽光に含まれる紫外線ももれなくカットしてくれます。UVカットタイプの曇りガラスなら、さらに紫外線を排除する効果が高くなります。
室内にいても紫外線からの影響は受けてしまうので、肌へのダメージが気になる方はリビングなどの大きな窓に曇りガラスを取り付けることをおすすめします。
2.3外からの視線をシャットアウトする
透明のガラスは、レースのカーテンをしていなければ外から丸見えの状態となり、家の中の間取りや貴重品の収納場所が第三者に知られてしまう可能性があります。
しかし、視線が入りやすい部屋の窓に曇りガラスを採用すれば、外から丸見えになる心配がありません。室内が見えにくくなると、不審者や侵入者にとっては「入りづらい家」と認識されやすくなるので、防犯性も高まります。
③窓ガラスにこだわる意味
窓ガラスは室内外を仕切る板のようなものであり、玄関に次ぐ避難口としても利用されます。ここをしっかりとこだわっておくことで、台風や地震などの災害時にも安心して過ごすことができますし、被害も最小限に食い止めることができます。
住宅の窓ガラスは、窓そのものの破損はもちろんですが、外からの飛来物や落下物によって破損するおそれもあります。熱や風、揺れなどの物理的な影響を受けやすい部分でもあり、少しでも性能を高めておきたいところです。
一例として、強風で庭の小石やベランダに設置しているアンテナや室外機が凶器となって窓を突き破ったり、雷が落ちた衝撃で窓ガラスが破損するなどの被害も報告されています。従来の透明ガラスではこうした強い衝撃に耐え切れず、窓の近くにあるものが被害を受けたり、場合によっては人やペットがガラスでケガをする可能性も。
豪雪地帯では、雪の重みでガラスが破損したり、天窓に雪がのしかかってガラスを破ってくるといった例があります。こうした物理的な影響に対して強い耐性を持つ強化ガラスや網ガラスしておくだけでも、万が一のリスクに備えることができるのです。
④ガラスを強化することで得られる効果
室内のガラスを強化することは、あらゆる災害に備えるという意味があります。日本においてもっとも頻繁に起こる災害に地震が挙げられますが、震度のレベルが高くなるほどガラスには負荷がかかり、割れやすくなります。
ガラスが割れて破片が飛び散ると、窓から脱出できなくなるだけでなく、床全体が非常に危険な状態になります。あらかじめガラスを割れにくい素材にしておくか、窓にフィルムを貼って対策をしておくことが地震への予防策となります。
日常生活でも、西日が強く差し込む部屋や、日差しがまぶしいといったトラブルについて、遮光ガラスや曇りガラスで遮光性能を高めて快適な部屋をつくることができます。 窓一面を遮光ガラスに取り替えるのが理想ですが、窓全体に遮光フィルムを貼るだけでも可視光線の40%以上をシャットアウトできるので、予算が厳しい場合は窓用のアイテムをうまく採り入れていくと良いでしょう。
ガラスを強化することは、室内の安全を守り快適さを向上させる効果があります。高齢のご家族、小さなお子さん、犬や猫などのペット、壊れたくない大切なものなど、すべての人やものを守ってくれるものが窓ガラスです。
防犯という観点から、窓ガラスを強化するのも一つの方法になります。たとえば外からの視線をカットできる曇りガラスを採用したり、反射の強い遮光フィルムを窓ガラスに貼るなどして、室内を見えにくくさせることができます。
まとめ
窓ガラスは外と室内を視線で結び、部屋を広く快適に見せるだけでなく、通気性を良くして家を長持ちさせるためにも必要な場所です。しかし災害時やセキュリティ面で考えると、通常のガラスでは少し不安が残ってしまいます。
遮光フィルムや防犯グッズなど、市販のアイテムを使って窓を強化することもできますが、ガラスの素材にこだわることも非常に有効な方法となります。使っているガラスによっては、せっかくの冷暖房機能が活かされずに、電気代を食っている可能性もあるため、今一度窓ガラスの素材を見直してみると良いでしょう。
一見するとどれも同じに見える窓ガラスですが、実際はガラスによって特徴や役割が異なり、環境に応じて多様なガラスが使われていることがわかります。簡単に交換できないものですから、価格や性能などに注意して慎重に選ぶ必要があります。
古い窓ガラスを交換する際は、室温を適温に保ちたいのか、外からの視線や直射日光のカットをするのかといった性能面を重視し、自宅にもっとも必要な機能を持つガラスを選ぶと良いでしょう。