強化ガラスの特徴とメリット・デメリット
私たちの日常生活において身近な存在の「ガラス」。
家の窓はもちろんのこと、車、各種雑貨など至るところで使用されています。 言うまでもなくガラスは透明なので、様々な用途で使いやすいという魅力をもった素材のひとつです。
しかし、最大のデメリットがあります。
それは衝撃に弱く割れやすいということ。きっと多くの人が「割れにくいガラスがあったらいいのに」と思ったことでしょう。
実は割れやすいというデメリットを極力解消したガラスがあります。それは「強化ガラス」です。この記事では強化ガラスの特徴をはじめ、利用される場所やメリット・デメリット、交換方法などについて具体的に解説していきます。強化ガラスについて知りたい方をはじめ、導入を検討されている方はぜひお役立てください。
はじめに
冒頭でも軽く触れましたが、強化ガラスはごく一般的な板ガラスに比べて強度の高いガラスです。メーカーによってその強度は異なるので一概に言えませんが、あくまで一般的な板ガラスと比較した場合、およそ3~5倍の強度があると言われています。
とはいえ、ガラスの専門家でもないかぎり、はたしてどれくらいの強度があるのか想像できませんよね?
わかりやすい例を出すのであれば、”人がぶつかっても割れにくいレベル”です。一般的なガラスはわずかな衝撃でも割れてしまうのに対し、強化ガラスは見た目こそ板ガラスですが強度は非常に高いというわけです。基本的に強化ガラスは、面での衝撃に強いだけでなく耐久性も高いという性質を持っています。よって、割れにくいガラスに交換したい場合は十分に検討する価値があります。
とはいえ、強化ガラスは多種多様。
「強化ガラスなら何でもいい」だとか「通常のガラスよりは強いんだからできるだけ安いものを購入すればいい」という考えでの交換はあまりおすすめできません。大切なことは利用したい場所にマッチした強化ガラスを選ぶこと。メーカーによって厚さは異なりますし、厚さによって強度が違ってきます。
さらにメリットだけでなくデメリットについて理解を深めることも製品選びにおいて重要なポイントになってくるので、まずは強化ガラスとは何なのかを把握することからスタートしましょう。まずは強化ガラスの特徴について具体的に解説していきます。
①強化ガラスとは
改めて説明すると「強化ガラス」は建物の窓などで一般的に使用されているガラスに比べて、強度の高いガラスのことを言います。製造方法も若干異なり、一般的なガラスに熱処理を付け加えると共に急激に冷やす工程を設けます。なぜこの工程だけで強化されるのかというと、熱処理+急激に冷やすことでガラスの外側(表面)は圧縮応力をもった状態、内側は表面の圧縮応力に沿って引っ張り応力をもった状態になります。この2つの応力によって衝撃を受けても割れにくい強度をもったガラスができます。
要するに強化ガラスは内側と外側の応力がほぼ均等になっているからこそ、一般的なガラスに比べて強度が高くなっているというわけです。強度は一般的な板ガラスの3~5倍と言われており、人がぶつかった時の衝撃や、サッカーボールなどが当たった時の衝撃を受けても割れにくい特徴をもっています。それでいて一般的なガラスと見た目が変わらないので、ごく普通のガラスとして使用することができます。
また、一般的なガラスは割れるとそれぞれが鋭利な刃物のように散らばりますが、強化ガラスは粉々に砕け散るので怪我をするリスクが極めて少なくなります。
1.1強化ガラスの厚さはほぼ決まっている
ごく一般的なガラスは様々な厚さがありますが、強化ガラスの厚さはほぼ一定と言っても過言ではありません。
残念ながら強化ガラスには2mm、3mmといった薄いラインナップがありません。先述したように強化する作業工程を設けても2mm~3mm程度の薄さでは強度を維持することが困難なためです。つまり、3mm以下の厚さの強化ガラスはない、ということになります(※あくまで2018年時点での結論)。
なお、現時点での強化ガラスの一般的な厚みの種類は以下のとおりです。・5mm
・6mm
・8mm
・10mm
・12mm
・15mm
・19mm
目安として自動車に取り付けられている横窓の強化ガラスの厚さの平均は5mmです。ちなみに現時点で販売されている強化ガラスのラインナップでもっとも大きいサイズは4500mm×2440mmとなっています。
1.2強化ガラスと防犯ガラスの違い
ここで多くの人が勘違いしてしまう部分があります。
それは「強化ガラスと防犯ガラスを混同してしまうこと」です。結論から言うと強化ガラスと防犯ガラスはまったくの別物です。
強化ガラスの特徴については前述したとおりですが、「防犯ガラス」はその名のとおり、防犯を目的として製造されているので強化ガラスの性質はまた異なったタイプになります。つまり、防犯を意識して不審者などから割られにくいガラスを使用したい場合は防犯ガラスが最善の選択です。防犯ガラスは1か所が破損しても連鎖的に崩れない特徴を持ちます。
そのため、ひとつの穴を作ることすらそれなりの労力を必要とします。一方で強化ガラスは点での衝撃には弱いというデメリットを持っているので、不審者が屋内へ侵入しようとバールなどで点の叩き方をすれば、いずれ粉々になってしまいます。
1.3強化ガラスの耐熱温度
強化ガラスの耐熱温度は以下のとおりです。・常用温度・・・200℃
・最高使用温度・・・200℃
※環境によって上下する可能性あり
ちなみに強化ガラスを加熱したとして急激に冷やしても割れないとされる温度はおよそ170度(5mmの場合)と言われています。なお、ガラスは厚みがあるほど熱の伝達が悪くなるので割れやすくなります。
1.4般的なガラスと強化ガラスの見分け方
一目見ただけでは一般的なガラスとの区別がつきにくい強化ガラスですが、実は偏光板を使うことで判別することが可能です。強化ガラスは性質上、表面に薄い膜ができており、日光にあたると光が屈折します。これを偏光板を使って判断することができるというわけです。
以下が強化ガラスを見分ける手順になります。1)太陽が出ている晴天時、偏光板でガラスの角をチェックする
2)このとき虹色なら強化ガラス、一般的なガラスは虹色にならない。ちなみに厚さのあるガラスほど光の屈折が多くなる特徴を持っているので、虹色であるかを確認しやすくなります。
②どんな場所に使用されているか
前述したように強化ガラスは割れにくく、割れた破片で怪我をする可能性が低いという特徴を持っています。しかしながら、防犯ガラスほど頑丈ではないので使用される場所はある程度限定されます。強化ガラスが使用されている一般的な主活躍場所は以下のとおり。
1)子供が怪我をする心配がある場所
2)公共の場所
一目で強化ガラスを判断することは難しいですが、実は多くの場所で使用されています。それに現時点では様々なタイプが製造・販売されており、用途も多種多様となっています。
また、室内の扉をはじめ間仕切りなどに強化ガラスが使用されるシーンも増えつつあり、ガラスがもつ魅力をインテリアに取り入れようとする方が増えています。 特に小さなお子様がいる家庭においてガラス製品の取扱いはリスクを伴いますが、強化ガラスに交換することによって万が一割ってしまったとしても怪我を未然に防ぐことができます。
③メリット・デメリット
何かとメリットばかりが目立つ強化ガラス。 確かに一般的なガラスを使用するよりは強く怪我の心配から解消されますが、デメリットがあることも理解しておきましょう。 ここでは強化ガラスのメリット・デメリットを具体的に解説していきます。
3.1メリット
強化ガラスのメリットは大きく分けると2点あります。 1)一般的なガラスよりも強化されているので割れにくい
2)割れても破片が鋭利にならないので怪我しにくい 人がぶつかっても割れにくい強化ガラスは、一般的なガラスと見た目がほとんど変わりありません。そのため、一般家庭にもごく一般的なガラスと同様取り入れることができます。
割れにくいメリットを持った強化ガラスですが、いくら強化加工がされているといっても一定の衝撃が加われば割れてしまいます。これはガラスである以上仕方のないことです。 一般的なガラスは割れるとさまざまな大きさの破片となり、その割れ目は鋭利で大変危険ですが、強化ガラスなら万が一割れてしまったとしても、その破片は粉々の状態になるため、怪我を未然に防ぐことができます。 よってまだ小さく活発なお子様がいるご家庭に取り入れることで、安全を手にできるというメリットが加わります。
3.2デメリット
割れにくいという性質を持っていることから、多くの人がデメリットなどないと思われているかもしれませんが、強化ガラスにも弱点は存在します。 強化ガラスは面の衝撃においてはある程度の強度を発揮しますが、点の衝撃には弱い性質を持っています。これは強化ガラスにかぎらずガラス全般に言えることですが、現時点で完全に割れないガラスは存在しません。
よって、期待しすぎて一般的なガラスと交換すると期待を裏切られることもあります。 また、強化ガラスは一般的なガラスを製造するよりも手間がかかることもあり、若干値段が高くなるという点、厚さが3mm以下の製品がラインナップされていないというデメリットもあります。
④交換するには
昨今の日本では防災意識が高まり、その対策として家庭に強化ガラスを導入するご家庭が増えています。 一般的なガラスと見た目が変わらず強度は増しているというメリットをもつ強化ガラスですが、「実際に家に取り入れるとなると簡単に交換できないのでは?」と思われている方は少なくないと思います。
しかし、ご家庭に強化ガラスを取り入れることは実に簡単なことです。 サッシを新しく交換する必要は一切なく、単純にガラスのみを替えるだけでOK。
ただし、交換には強化ガラスの費用だけでなく工事費、残材処理費用などが発生するので予算を検討しておく必要があります。 ここでは強化ガラスの交換に必要な費用の相場などを詳しく解説します。
4.1強化ガラスの価格
強化ガラスの厚さは主に4mm~19mmとなっているので、交換を希望する場合は現在利用しているサッシに合わせてガラスの厚さを計測することからはじめてください。
なお、一般的な強化ガラスに特殊加工(エッジ加工や強化加工)を施したものは追加料金が発生するので、十分に価格情報を理解してから注文しましょう。
それでは強化ガラスの価格相場を記載します。 ・ノーマルタイプ(厚さ4mm~10mm)・・・約20000~40000円
・くもり加工タイプ(厚さ4mm~10mm)・・・約5000~30000円 このように強化ガラスは一般的なガラスよりもやや高めといった価格設定になっているので、比較的取り入れやすいと言っても過言ではありません。
4.2工事費用
強化ガラス単体の価格だけを見ると安さを感じるかもしれませんが、取り付けや交換を業者に依頼する場合、その他工事費用がかかるので注意が必要です。 それでは強化ガラスの交換にかかる工事費用を掲載します。
・ガラスを交換するためにかかる工事費・・・1枚につき約10000円
・残材処理にかかる費用・・・1枚につき約2,000円 ただし、これらの相場はあくまで一般的な工事で完了する場合の費用になります。たとえば、天窓などの高所に取り付けるなど、足場やクレーンなどが必要になる場合は別途費用がかかるので注意が必要です。 また、現在使用しているサッシへの交換であれば一般的な工事費で済むと思いますが、特殊形状の窓にリフォームを検討する場合は新たに加工費や追加工事費が必要になります。
4-3.よりよい業者選び
強化ガラスの交換工事に対応している業者(リフォーム会社)は数え切れないほど存在します。
おそらくあなたがお住まいの地域にも何社か営業していると思いますし、費用はまちまちだと思います。 よりよい業者選びをするためのコツとしては、まずはお住まいの地域に対応している業者をリストアップし、さらにその中から信頼や実績を吟味して3社ほどに絞込みます。各業者ともに本作業をする前に「現地調査」が必須なので、それを活用して相見積もりするのがベストです。
まとめ
強化ガラスは一般的なガラスの約3~5倍の強度をもちながら、割れにくいという特徴をもっています。さらに万が一割れても破片がボロボロに崩れるので怪我をしにくいというメリットがあります。
やや高めの価格設定になっているものの、ご家庭の安全を検討するのであればコストパフォーマンスに優れたガラスと言っていいでしょう。 交換は既存のサッシにそのまま取り付けできるので、厚さを間違えなければスムーズに作業が進むかと思います。 ただし、ガラス単体の費用以外に工事費などが必要になるので、よく業者と相談して満足のいく交換を行ってくださいね。