網入りガラスの熱割れとは?原因と予防対策について

住宅や施設など、様々な場所で使用されているガラスには、多くの種類が存在しています。この種類によってそれぞれが違った特性を持っているため、同じガラスとはいえその差について知っておく事が重要です。そんなガラスの種類の一つとして、網入りガラスというものがあります。ここでは、この網入りガラスというのがどのようなものであるのかについてまずは紹介します。
網入りガラスというのは、その名前の通りガラスの中に金属の網が入っているもののことを言います。この網は火災の際にガラスが割れて飛び散らないようにするためのものです。ガラスが割れて大きく穴が空いてしまうとそこから空気が入ってしまい、火災の拡大や延焼を引き起こす可能性があります。その防止の為の効果と、ガラスが飛び散ってしまうことによって避難に支障をきたすことを防止するための効果とがあります。


ちなみにこの網入りガラスは、一見すると人間の侵入を阻む効果がある、つまり防犯性も高いように見えるのですが、実際にはそのような効果があるわけではありません。この網は細いものであり簡単なペンチなどでも寸断することができてしまうため、防犯効果としての役割は持っていないものとして考える必要があります。
それでは、そんな網入りガラスについて、気をつけるべきポイントには他にどのようなものがあるのでしょうか。ここでは網入りガラスのポイントとなる大きな問題である「熱割れ」というものについて紹介します。この先では「熱割れ現象が発生する原因」「熱割れ対策を業者に依頼」「家庭でもできる熱割れ予防」という3つの項目から、この現象についてご紹介します。

①熱割れ現象は自然発生する!その原因とは

によって発生するというものではなく、日射によっても十分発生する可能性があります。
窓ガラスは日射を受け、直接加熱されることによってその部分が膨張する性質を持っています。しかし、ガラスは全体が日射を受ける場所にあるわけではなく、サッシの縁に含まれている部分や、陽の当たらない部分というのが存在しており、これらの場所については直射日光があたっている場所に比べると膨張が発生しにくいことになります。このような状態になると、高温状態になっている場所の熱膨張が、周辺の熱膨張を起こしていないガラスによって拘束されているような状態となります。これがガラス内部で発生することによって、引張応力と呼ばれる力が発生します。この引張応力がガラスの耐久性を超えることによって、耐えきれなかった部分が力を放出するために割れてしまうことになります。

このような現象は、網入りガラスに限らず通常のガラスでも発生する可能性があるものです。ただし、網入りガラスに比べるとその発生率は低く、一般的な直射日光によってこのような状態になることはあまりありません。それでは、なぜ網入りガラスについて、特筆するほど熱割れに対する注意が必要なのでしょうか。
この先では「網入りガラスが熱割れしやすい理由」「熱割れが発生しやすい季節」「ガラスフィルムがあれば安心か?」という3つのポイントについてそれぞれ解説します。

1.1どうして網入りガラスが熱割れしやすいの?

それでは、まず網入りガラスが熱割れを起こしやすい理由について紹介します。大前提としてその耐久性についてですが、一般的な、特別な加工がされていないフロートガラスに比べると、約半分程度の耐久性しかないのが実状です。このような性質を有する原因となっているのは、網入りガラスが網入りガラスたる所以である、まさにこの網にあります。
網が封入されていることによって、どうしてもガラス自体の強度が減少するようになってしまっています。また、排水機構が機能しないなどの理由によってエッジ部分の強度に問題が発生することで、網入りガラスの強度はさらに下がる可能性があります。

1.2熱割れが起こりやすい季節とその理由

では、網入りガラスの熱割れというのは、どのような季節で発生することが多いのでしょうか。熱によって発生するというイメージから、やはり夏に多いのか、というように思われる事が多いかもしれませんが、実は夏だけが熱割れの発生する季節ではありません。確かに夏は発生しやすい時期ではあるのですが、もう1つ、冬も熱割れが発生しやすい時期の一つとなっています。
冬場は外気温による熱割れの心配はあまりないのですが、問題は外気温が冷たく、かつ内気温がエアコンやストーブなどによって上がっており、温度差が激しい状態になっている可能性が高いことにあります。それでも比較的頑丈な状態のガラスが熱割れを起こすことは多くはないのですが、長期間使用しているなどの理由から耐久性の減少が発生している場合についてはその限りではなく、ストーブの熱と外気の寒さのギャップから熱割れが発生してしまうことも多くあります。夏場については確かに熱による影響は大きいものの、温度差はそれほど発生しないため、被害が発生しない、ということもあります。

1.3ガラスフィルムは逆効果?

ガラスの耐久性を高めるための方法として、よく使用されるものの1つであるのがガラスフィルムを使用するものです。それでは、このガラスフィルムは熱割れを防ぐために効果を発揮するのでしょうか?実はこのガラスフィルムは、熱割れを防ぐための効果は薄いどころか、逆効果になってしまう可能性があります。その理由は、ガラスフィルムを貼ることによって日射吸収率が高くなってしまうためです。前述の通り熱割れというのは日射熱によって発生しているもので、この吸収率が高くなってしまうとガラス本体における熱が集まりやすくなり、サッシに埋め込まれている部分の熱が集まりにくいままであるため、温度差が発生して熱割れを発生させやすい状況を作ってしまうことになります。
そのため、多くのパターンで効果を発揮するガラスフィルムを貼るという方法では、熱割れを防ぐための効果は期待できません。

②熱割れ対策を業者に依頼しよう

ガラスフィルムによって熱割れを防止する効果があまり期待できないということになると、熱割れ対策を効果的に進めるためにはどのような方法が期待できるのでしょうか。これについては、適切な業者に依頼をして、適切な方法で対策をしてもらうという方法があります。それでは、実際に熱割れを防止するための方法について業者に依頼する場合には、どのような内容となるのでしょうか。
まずは「施工時にしておきたい対策」、続いて「ワイヤレスタイプのガラスへの交換」、「グレージングチャネルの交換」、「ガラス交換などの相場」という4つの項目から、熱割れ対策の業者依頼について紹介します。

2.1施工時に熱割れ対策をきちんとしよう!

もしこれから網入りガラスを導入したいと考えているのであれば、熱割れ対策として重要なのが施工時に適切な対策をしておくということです。では、網入りガラス設置時の施工上のポイントとしてはどのようなものがあるのでしょうか。
まず重要なのが、クリーンカットのガラスエッジを使用するということです。ここまでの説明の通り、熱割れというのは縁の部分と中央部分の温度差が重要なポイントとなっています。そのため、エッジ強度を低下させてしまうことにつながる縁の部分の始末が十分に行われていないことは、熱割れの耐久度を下げてしまうことに繋がります。

また、エッジ部分のシーリング材についても、弾性シーリングと呼ばれる物を使用することが重要になります。シーリング材にはガラスビートと呼ばれるものと、弾性シーリングとがあり、ガラスビートは防錆性の低さが問題となってエッジ部分の劣化を早めることになってしまいます。シーリング加工の方が費用が高くかかることになりますが、その後のことを考えるとコストパフォーマンスには優れます。
そして最後に、ガラスとサッシが直接触れている状態にならないように、クリアランスを取るようにすることです。金属部と直接振れてしまっていると、エッジ部分の温度が低下し、温度差を引き起こしやすくなってしまいます。

2.2ワイヤレスの耐熱強化ガラスへの入れ替え

網入りガラスはワイヤーが入っていることによって美観性を上げている部分もありますが、人によってはクリアなガラスの方がありがたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、金属線が入っていることによって熱割れへの耐性が下がっている部分があることを考えると、ワイヤーが入っていないで、かつ十分な防火性を有しているガラスであるのであれば、そちらに交換するという方法もあります。

例えばそのような性質を持っているガラスの種類の一つとして、耐熱強化ガラスというものがあります。耐熱強化ガラスは網入りガラスと違ってワイヤーは入っておらず、耐衝撃強度が通常のフロートガラスの6倍程度あります。また、強化ガラスの性質上、割れてしまった時に鋭利な破片として飛び散ることがなく、小さな粒状に砕けるという性質を持っています。これらの性質から、耐熱強化ガラスは十分網入りガラスの代替としての効果を発揮することができるでしょう。

2.3グレージングチャネルの交換

また、業者に依頼することによって行う事ができる熱割れ対策の1つとして、グレージングチャネルの交換というものがあります。そもそもこのグレージングチャネルというのは、ガラスをサッシに取り付ける際に使用しているゴム状のパッキンのようなものだと思っていただければわかりやすいでしょう。いわゆるシーリング材です。

このグレージングチャネルが適切な弾性を保っているのであれば、ガラスの熱膨張が発生したとしても、その分の衝撃を吸収することができるために熱割れを防ぐことができます。しかし、このグレージングチャネルは経年劣化によって硬化する性質があるため、そうなると弾性が不足して衝撃を受け止めきる事ができずに熱割れを発生させてしまう原因となります。このような事態を避けるためには、割れてしまう前に、定期的な点検を行った上で交換を行うようにしなければなりません。使用期間が長くなってきたら、問題が発生する前に交換を行うようにしましょう。

2.4ガラス交換などの相場について

それでは、業者に依頼してガラスの交換を行おうとする場合、どのような費用が必要となるのでしょうか。ガラスの交換については、いくつかの種類の費用が必要となり、それぞれの費用の合算が必要となります。まずはガラス交換自体の費用ですが、これは交換崎となるガラスの大きさなどによって左右されるものの、おおよそ1万円から2万円前後です。
また、古いガラスの廃棄にかかる費用についても考えておく必要があります。こちらについては5千円から1万円程度であることが多いでしょう。この他にも、交通費や駐車場費などの諸経費がかかることになります。また、高所作業などが必要となる場合には、別途特別な作業費用が必要となる可能性もあります。

③家庭でできる熱割れ予防!

ここまでは、施工時や加工、交換などによって熱割れを防止する方法を紹介してきました。それでは、自宅で、自分でできる熱割れの予防方法というのはないのでしょうか。ここでは、自宅でも比較的簡単に行う事ができる熱割れの予防方法としてのようなものがあるのかについて紹介します。

3.1冷暖房をガラスにあてないこと

熱割れの予防策として、まずポイントとなるのは冷暖房を直接ガラスに当てないようにすることです。これまでにも紹介してきたとおり、基本的に熱割れというのはガラスの中での温度差が広がる事によって発生するものです。そのため、冷暖房を当てることによって、外側の温度と内側の温度が大幅にずれてしまうと、熱割れが発生しやすくなってしまいます。特に一部にだけ冷暖房があたっているような状態が続き温度差が発生してしまわないようにするだけでも、かなりの熱割れ予防効果を発揮します。

3.2カーテンや洗濯物でガラスに影を落とさないこと

また、厚手のカーテンなどを引いたり、洗濯物を掛けておいたりすることによって、ガラスに対して影が落とされる状態になっていることも熱割れの原因となります。一部だけ日のあたりが変わることによってガラスの温度差が発生しやすい状態になってしまうためです。
特に陽の光を遮りやすい、布団のようなものを干す場合には注意するのが良いでしょう。

3.3熱割れが起こった際は速やかに交換依頼をしよう

このような対策を行っておいても、状況が整った時には熱割れが発生してしまうことは有り得ます。そのような場合に重要なのは、ちょっとしたヒビと思って放置することなく、できるだけ速やかに交換を行うことです。ガラスの耐久性というのは、割れがなく、全体に対して圧力が一定であることによって保たれています。そのため、小さいヒビであっても圧力に歪みが発生してしまうと、ガラスの耐久性は全体で低下することになります。
そのため、そのままの状態にしておくと、ガラス全体に対して被害が拡大してしまう可能性が十分あります。早めに対応を行い、問題を小さい内に解決することが重要です。

まとめ

それでは最後に、網入りガラスにおける熱割れについての情報をまとめます。まず熱割れの原因についてですが、特別なことをせずとも日射熱によってガラスの中で温度のズレが大きく発生することです。網入りガラスはガラス内にワイヤーが入っていることによって熱割れに対する強度が低い性質を持っているため、他の種類のガラスに比べて熱割れのリスクが高くなっています。
熱割れに対しての対策としては、業者に依頼する方法と、普段から気をつけることで予防をする方法とがあります。いずれも合わせて行っておくことで網入りガラスでも熱割れによるリスクを大きく下げることができます。また、網入りではなく、同じような効果を持っている網の入っていないガラスに交換をするのも方法の一つです。

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