断熱や防カビに最適なペアガラスのメリット・デメリットを解説

冬場、特に朝晩が冷えることが多い厳冬期に、窓ガラスの結露や窓ガラスの近くの寒さに悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
そんな悩みを解決してくれるかもしれない便利な窓ガラスがあります。

ペアガラスと呼ばれている二重構造のガラス窓にすれば、ガラス窓の透過性をそのままに窓の断熱性能を高めてくれます。
ペアガラスは北海道や東北などの寒い地域で人気のあるタイプの窓ガラスでしたが、最近は寒い地域以外でも人気が高まってきています。

今回は、窓の外観や透過性をそのままに、断熱性能を飛躍的に高めてくれる便利なペアガラスについて、メリットやデメリットなども解説しながらご紹介します。

①ペアガラスとは

ペアガラスとは、専用の金属の部品でガラスを2枚あわせにして作られた特殊な窓ガラスのことです。
スペーサーと呼ばれる金属の部品で2枚のガラスを合わせ、その間には空気やガスなどが入っています。
取り扱う業者によって違う名前で呼ばれていることもあり、複層ガラス、ペヤガラス、ペアグラスとも呼ばれています。

特に断熱性に優れていることに定評のあるペアガラスですが、通常の窓ガラスと同じ素材で作られているのに何故高い断熱性を持っているのでしょうか。
次の項では、ペアガラスの断熱性の仕組みを解説していきます。

1.1ペアガラスの仕組み

ペアガラスのガラス板の間には、何もない空間があります。
実はその空間が、ペアガラスが高い断熱性を発揮している最大の秘密でもあるのです。

ペアガラスに使われている2枚のガラス板の間には、乾燥した空気と、空気の湿気を取り除くための乾燥材が入っています。
この乾燥した空気は、ガラスと比べると熱伝導率がおよそ30分の1と非常に低く、熱を通しにくいです。
そのため、ガラスの間に空気を挟むと、壁の間に断熱材を挟むのと同じような仕組みが働いて、外気の寒さや暑さをそのまま伝えずに和らげてくれるので高い断熱機能を発揮することができるという仕組みになっています。

このペアガラス内の空気の層の厚みを調整することで、より高い断熱性能を発揮することも可能です。
また、空気よりも熱伝導率の低いアルゴンを空気のかわりに入れることで、より断熱性を高めたアルゴン入りペアガラスもあります。
そして、ガラスそのものにも放熱を防止する加工を施したLow-Eガラスというタイプのペアガラスも最近人気です。

1.2Low-Eガラスって何?

ペアガラスに使用されるガラスには、通常のガラスとLow-Eガラスというガラスがあります。
Low-Eガラスとは、「LowEmissivity」の略称で、「低放射」という意味です。
その名前の通り、熱の放射が低く、特に太陽光の日射熱をカットすることに優れています。

太陽の熱をカットすることで、冬暖かいだけではなく、夏の日差しが室内の温度を上昇させるのを防いでくれる効果があります。
夏の冷房効率を上げてくれて節電になるので、最近人気が高まっています。
部屋の西日が強くて困っているという場合や、室内の熱中症対策にも有効です。

②ペアガラスの種類

一口にペアガラスと言っても、ペアガラスには様々な種類があります。
ペアガラスである以上、どのようなペアガラスも通常の一枚のガラス窓よりも断熱性能は優れていますが、その種類ごとに断熱性能や追加される機能などに少しずつ差が出てくるのです。
主なペアガラスの種類について解説していきます。

2.1一般複層ガラス

一般的なペアガラスというとこの「一般複層ガラス」を指すことが多いです。
2枚のガラスを金属の器具で挟んで、一枚の板上の窓ガラスに仕立てたものがこのように呼ばれています。

ペアガラスの間の空洞の部分には、乾燥した空気が詰められています。
これは、壁の中に熱伝導率の低い断熱材を詰めると断熱性があがるのと同じ原理を採用しています。
ガラスとガラスの間に熱伝導率の低い空気を挟むことによって、ガラス窓の透過性はそのままに、窓そのものの断熱性を向上させることが可能になるという訳です。

2.2高断熱複層ガラス

先ほど解説したLow-Eガラスを採用したペアガラスです。
通常の一般複層ガラスよりもより高い断熱性を持つので、高断熱複層ガラスと呼ばれています。

特にLow-Eガラスは、放射する熱を抑えてくれる加工が施されています。
そのため、冬場の外気温の寒さを和らげてくれるというペアガラスそのものの機能に加えて、夏場の太陽からの日差しが原因で室内に発生する熱も抑えることができるようになります。

断熱性が高まり、部屋の中の温度が一定に保たれやすくなるので、暖房や冷房の効率が上がるのはもちろん、部屋が暖まったり涼しくなったりするまでの時間も短縮することができます。
特にエアコンを使用している場合、部屋の気温が目標温度まで到達するまでに電力を多く使用しているので、この時間が短縮されることは電気代の節約にも繋がってとてもお得です。

2.3アルゴン入りペアガラス

ペアガラスとなっている2枚のガラスの間には、通常は乾燥した空気が入っています。
この空気の部分をアルゴンという気体に変えて充填してあるのが、アルゴン入りペアガラスです。

アルゴンは、空気中に窒素・酸素に次いで3番目に多く含まれている気体です。常温、常圧の環境のもとでは無色、無臭の上に不活性という特性があり、その特性を生かして食品の保存能力を高める不活性ガスなどにも利用されています。
このアルゴンは空気よりも熱伝導率が低いという特性を持っているので、ペアガラスの間にアルゴンを入れたアルゴン入りペアガラスは、通常のペアガラスよりもより断熱性能の高いペアガラスとなります。

アルゴン自体もガスと呼ばれてはいますが安定した構造の気体のため安全性が高く、空気中にも多く含まれている気体なので吸い込んでも人体に害を及ぼしません。
そのため、万が一破損などでアルゴンが漏れ出しても、異臭がしたり、アルゴンに引火して火事になるなどの危険性はありません。
メーカーによっては、アルゴン入りペアガラスをさらに防犯ガラスと組み合わせたり、Low-Eガラスと組み合わせてさらに断熱性能を向上させたりした製品を取り扱っているところもあります。

2.4防犯型ペアガラス

ペアガラスの2枚のガラスのうち、室外側のガラスに防犯フィルムを挟み込んだ「合わせガラス」を採用したペアガラスです。
ペアガラスはガラスが2枚合わさって作られているので元々通常の一枚ガラスよりも防犯性は高いと言われているのですが、室外側のガラスを防犯フィルム付きのガラスにすることによってさらに防犯性を高めることができます。

防犯ガラスを採用することでガラスが割れにくく、割れても破片が周りに飛散しなくなるので、防犯だけでなく強風による飛来物対策としてもおすすめです。
メーカーによっては、前述したアルゴン入りペアガラスや、Low-Eガラスを採用した高断熱タイプとも合わせて作ることが可能なようですが、その分費用は高額になります。

③ペアガラスのメリット・デメリット

断熱性に優れ、防犯や放射熱も抑えてくれるペアガラスは一見メリットだらけに見えます。
確かにペアガラスのメリットは非常に多く高機能ですが、メリットばかりではありません。
ぺアガラスのメリット・デメリットを比較してみましょう。

3.1ペアガラスのメリット

ペアガラスのメリットは、まず断熱性に優れていることです。
ペアガラスの断熱性能は、最もシンプルな構造の一般複層ガラスでも、通常のガラスの1.5倍以上の効果があると言われています。
家の中でも大きな面積を占める窓の断熱性能を上げることで、夏は涼しく、冬は暖かいという理想的な家の中の環境に近づけることができます。

さらに断熱性能が高くなることで、家の中の冷暖房の効率も良くなるので、光熱費の節約効果も期待できます。
夏や冬の冷暖房の効きが良くなるのはもちろんですが、春や秋などの日ごとに気温に差があるような時期でも、家の中の温度を一定に保ちやすくなります。
その結果として、冷暖房を使う機会そのものを減らせるということもあるでしょう。

そして、ペアガラスは外気と部屋の中のガラスの間に乾燥した空気やアルゴンなどの断熱層があるおかげで、通常のガラスよりも結露しにくいのも大きなメリットです。
冬の朝に結露でカーテンがびしょびしょに張り付いている、カーテンにカビが生える、という事態に悩まされることも少なくなります。
断熱性能の高いLow-Eガラスや、アルゴン入りのタイプを選ぶと断熱効果が高く、より一層結露が発生しにくくなるのでおすすめです。

3.2ペアガラスのデメリット

ペアガラスのデメリットとして、自力で加工することが難しいという点が挙げられます。
ガラスを自力で加工しようという人はあまりいないかもしれませんが、ペアガラスは特殊な構造になっているため、自力で切断したり、加工したりといったことはできません。
また、破損してガラスの間から空気やアルゴンが抜けてしまった場合、断熱性能は極端に低下してしまいます。

それに加えて、ペアガラスは通常の一枚のガラスに比べて価格が高価である、という点も忘れてはいけません。
自宅の窓を全てリフォームしたり、新築の窓ガラスをペアガラスにしたいと検討したりしている場合、予算をきちんと考えないと費用が膨らんでいってしまいます。

そして、最も大きなデメリットは、高い断熱性で冬の日差しの温かさまでさえぎってしまう可能性があるという点です。
断熱性能が高いということは冷暖房の効率が良くなる、とお伝えしましたが、冬の日中、小春日和のような日差しがあったとしても断熱性能で熱が伝わってこない可能性があります。
特にLow-Eガラスなどの断熱性能の高い窓を設置する場合、夏の日差しを遮ることを優先するのか、ある程度外気温を取り入れた方がいいのかをよく検討してから設置するようにしましょう。

④ペアガラスに交換するには

断熱や結露防止、さらには防犯など、ペアガラスのメリットは非常に魅力的です。
しかし、住宅の状況によってはペアガラスへのリフォームは難しい場合があるかもしれません。

実は、ペアガラスを扱っている業者の中には、ペアガラスはリフォームには向かないと言う業者もいます。
自宅の窓をペアガラスに交換したいと思ったとき、どのような点に気を付ければいいのでしょうか。

4.1ペアガラスはリフォームには向かない?

家の窓をペアガラスにリフォームする際に気を付けなければならないことは、ペアガラスの厚みです。
ペアガラスは一枚ガラスと比較すると、ガラス2枚と中間の空気の層のぶんどうしても厚みが増してしまいます。
さらに、その厚みのあるペアガラスを支えるサッシの部分がペアガラスの大きさと合わないサイズだと、取り付けがより難しくなってしまいます。

さらに、窓についているものは窓ガラスだけではありません。
窓ガラス以外にも、窓には網戸やカーテンレールなど、様々なパーツが取り付けられていることがほとんどです。
ペアガラスで窓が厚くなっても、これらのパーツがきちんと作動するかどうか、という点も考えなくてはいけません。

このような事情から、ペアガラスへのリフォームを希望していても、どうしても家の構造上ペアガラスを入れることができない家というのは出てきてしまいます。
このような事例があるので、業者の中にはペアガラスはリフォームには向かない、ということを言うところがあるようです。

4.2ペアガラスに交換する際の注意点

では、ペアガラスに交換する際の注意点として、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。

まず、複数の業者から見積もりや現地調査を受けることが大切です。
一口にペアガラスと言っても、ペアガラスの種類や厚みは様々です。
とある業者ではリフォームが無理だと言われてしまっても、別の業者が扱っているペアガラスならばリフォーム可能、ということもあります。
また、複数の業者から見積もりをとっておくと、価格の比較ができるので悪徳な業者を避けることにも繋がります。

次に、ペアガラスを入れた後に窓周辺の設備やパーツはそのまま使えるのかという点を必ず業者に確認するようにしましょう。
ペアガラスへのリフォームは、サッシから取り換えが必要な場合もあれば、アタッチメントの設置で簡単に施工可能な場合もあります。
サッシから交換した場合は問題ありませんが、既存のサッシにそのままペアガラスを入れた場合、ペアガラスの厚みで網戸が使えず、専用の網戸が必要となる場合があります。

ペアガラスの種類を部屋ごとによく考えて設置することも大切です。
先ほどデメリットの項で述べましたが、高い断熱性を持つペアガラスは暖かな日差しの熱も遮ってしまう可能性があります。
夏に直射日光が当たって暑い部屋にはより断熱性の高いペアガラスを、日差しの温もりもある程度感じたい部屋には一般複層ガラスを、という風に、機能性によるデメリットも計算して設置する種類を選ぶようにすると快適に過ごすことができます。

まとめ

ペアガラスは断熱性に優れ、光熱費の節約にも大きな力を発揮してくれる優秀な窓ガラスです。
しかし、設置の問題や高い断熱性ゆえのデメリットなど、長所ばかりというわけではありません。

家の窓をペアガラスにリフォームする際は、どのような家にしたいのか、予算はどれくらいなのか、欲しい機能は何かなど、なるべく具体的なビジョンを持って業者と相談するようにしましょう。

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