窓サッシの鍵(クレセント錠)の交換・取付方法
住宅が犯罪の対象とならないためには、住宅全体の防犯性を向上させるために様々なことを行う必要があります。ただ、その中でもやはり重要なのは鍵をしっかりと設置し、この住宅には侵入することが難しいと考えさせることにあります。住宅の鍵として、やはり重要な意味を持っているのは玄関の鍵ですが、それと並んで防犯性のために重要であるのは窓の鍵です。窓も空き巣による重要な侵入経路の1つとなっており、こちらをしっかりと整えておくことも犯罪に合わないようにするためには重要な要素となります。
そこでここでは、そんな窓に使用されている鍵の種類である「クレセント錠」というものについて紹介します。クレセント錠の交換と取り付けについて「クレセント錠がどのようなものであるのか」「クレセント錠交換のポイント」「1人でもできるクレセント錠の交換」「錠前以外でのセキュリティの向上」というようなポイントからそれぞれ紹介していきます。
①クレセント錠ってどんなもの?
それではまず、そもそも窓に使用されるクレセント錠というのがどのような種類の鍵であるのかについて紹介します。クレセント錠は、基本的には窓に使用されるもので、アルミサッシの窓で使用されているのが一般的です。室内側から開け閉めをできるようにするためのもので、外から開け閉めをすることは想定されていないのが特徴となります。そのため、錠ではあるものの鍵はなく、あくまでも内側から開けることのみを考えているのがセキュリティ上の重要なポイントとなっています。
その名前の由来となっているのは、回転させるための部分が半円状になっていることです。クレセントというのは、英語で三日月のことを意味しており、その形が三日月のような形をしていることからクレセント錠と呼ばれるようになりました。ただ、このクレセント錠というのは元々は錠前としての役割が重要であったわけではなく、これによって窓をしっかりと締められるようにすることで、ガラスの密閉性を高め、防音や防寒効果を高めることが目的であり、防犯性についてはそれほど考慮されているものではありませんでした。そのため古くはガラスを破ることによって簡単に回す事ができてしまい、窓ガラスに対する防犯対策をしっかりしていないとあまり効果がない鍵であったのも事実です。
しかし、昨今では鍵付きのクレセント錠や、窓枠に補助錠を取り付けるタイプというものも登場するようになっており、窓に於ける防犯性の低さと胃う問題はこれらを使用することによってある程度解決できるようになってきているのも事実です。
1.1クレセント錠と呼ばれる理由
さて、前の段落でクレセント錠の名前の由来となっているのは、英語で三日月を意味しているクレセントである、ということを紹介しました。名前の通り確かに三日月状ををしているわけですが、どちらかというと半月なのでは?というように感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はこの鍵がクレセント錠と呼ばれる様になった背景には、この鍵をヒット商品とした会社の名前も関係しています。
元々はアメリカの金物メーカーであった「クレセント社」がこのクレセント錠の流行を作ったものであるため、その名前を取ってクレセント錠、という名前が残るわけになったのです。両方の意味が取られた、一種のダブルミーニングのような名前であるわけです。
1.2防犯用のクレセント錠の一例
前項においても、そもそものクレセント錠というのは密閉を目的としたもので、防犯性についてはそれほど考慮されていたものではない、ということを紹介しました。ここではより具体的に一般的なクレセント錠に於けるセキュリティ性と、それを解決するようになっている新しいタイプの鍵について紹介します。
そもそものクレセント錠というのは、三日月状の耳のような金具を引っ掛けるだけというもので、簡単に開け閉めを行うことができます。それこそ小さな孔であってもガラスに開けることができれば、後は簡単に開けることができてしまうでしょう。窓ガラスが防犯対策をしていない場合、割って開けるのに1分とかからないということになります。
空き巣が窓に限らず侵入を試みようとする場合、諦めるのに掛かる時間は5分程度であると言われています。5分以上その場に滞在することになると周辺住民に目撃される可能性も高くなり、リスクが上がる為に、それ以上掛かった場合、あるいは掛かりそうな場合についてはその住宅を避けるようにすることが多いのです。そのため、重要なのは絶対に開けられない窓にすることではなく、5分以上開けられない窓にすることにあります。
まずクレセント錠を交換することによってこのセキュリティ性を高めることができます。例えば鍵付きのクレセント錠というのはその選択の1つとなるでしょう。これは住宅玄関の鍵と同じように、鍵を差し込まないと開閉を行うことができないタイプのクレセント錠となります。無理やり窓を割ったとしても、簡単に開けることができないためにセキュリティ性を向上させることができます。鍵自体は小型であることもあって簡易なものであることが多いですが、ピッキングをできる程の大きな穴を開けることは難しく、中々窓から侵入できない状態とすることができるでしょう。
また、物理鍵ではなく、ダイヤル鍵式のクレセント錠というのも登場しています。上記の物理鍵型のクレセント錠である場合には鍵を使わなければ開け閉めができないため紛失してしまうことによるリスクがありましたが、こちらであれば番号を入力するだけで開け閉めができるため、そのリスクを解消することができます。ただし、サッシのサイズに合わせてサイズを選択する必要があるため、取り付けが難しいタイプの窓もある、というのが1つのリスクとなるでしょう。
このように新しいクレセント錠を取り付けるのとは別にも、窓ガラスの防犯性を向上させる方法というのがあります。まず、そもそも窓ガラスを割れにくくするために、ガラスフィルムを装着するという方法です。できることなら更に防犯ガラスに交換することによって高い効果をもたらすことができるでしょう。そして、クレセント錠以外にも補助錠を設置することによって、クレセント錠だけを開けても窓が開かない状態にする、というのも良い方法の1つです。
②クレセント錠の交換は事前のサイズ計測がポイント
それでは、実際にクレセント錠を交換するための手順についてどのようなことが重要であるのかについて紹介します。クレセント錠の設置を行う場合、何より重要なのは事前にしっかりと寸法を測っておくことです。この寸法が合わないものであると設置ができないため、無作為に購入したクレセント錠を無駄にしてしまう可能性があります。
この時、測っておくべきなのがクレセント錠に対応することができる高さがどの程度であるのか、ということです。サッシ部分から垂直方向に見て、最長部までの距離をクレセント錠の高さと呼びます。これが設置でき、問題なく回す事ができるだけのスペースがあるかどうかを必ず確認するようにしましょう。
さらに、クレセント錠の重要な寸法となるのが、引き寄せ幅というものです。これはクレセント錠の上下のビスを直線で結び、その中点から掛け金までの距離を示しているものです。これに加えて、ビス同士の長さについても測っておくようにしましょう。この3つの寸法がわかっていると、窓に対して適切な大きさのクレセント錠であるかどうかを判断することができるようになります。
2.1どうしても寸法があわない場合は可変寸法のクレセント錠を
上記のように窓側、現在使用しているクレセント錠の寸法を測ってみてホームセンターなどでクレセント錠を探してみると、合致するサイズのものが見当たらない、ということは実はそれほど珍しくありませ。特別なサイズのものが使用されているような場合もあり、このような場合には一般的なものを使用してもサイズが合致せずに使用できない可能性が生じてしまいます。こういった場合に使用することができるのが、可変寸法型のクレセント錠です。
名前の通り高さなどを調節して設置することができるタイプのものであるため、自分の窓に合わせて適切なサイズとして使用することができます。可変クレセント錠ごとにどれ位の範囲内で可動させることができるかどうかが違っているため、事前に測った長さと比べて、可動域の中に入っているかどうかを確認して使用するようにするのが良いでしょう。
③プラスドライバー一本でできるクレセント錠の交換方法
それでは、ここからは実際にクレセント錠を交換するための手順について紹介します。クレセント錠の交換を行う場合にはまずは事前に用意しなければならないものがあります。1つは交換先となるクレセント錠です。前の項目でも紹介した通り寸法を測って、合致する種類のクレセント錠を用意しておくようにしましょう。
その上で交換のために必要となる工具ですが、これは特別なものが必要なわけではありません。もちろんメーカーや製品によっては特別な工具を必要とする可能性もないわけではありませんが、基本的にはプラスドライバーでのみ設置されている場合が多く、取り外しに関してもプラスドライバーが一本あれば大抵のクレセント錠の交換に対応することができます。
3.1クレセント錠の取り外しの手順
それでは、実際にクレセント錠を取り外し、新しいものを取り付けるための方法について紹介します。クレセント錠の種類によっては、ネジカバーがついており、そのままで取り外し作業ができない可能性があります。このネジカバーは手で簡単に外すことができるものではないため、細長いものを隙間に入れて、テコの原理を使用するように取り外すようにしましょう。ここにだけはプラスドライバーではなくマイナスドライバーを使用するのが適切です。また、上下に取り外すことができるタイプもあるため、こういったものはスライドして取り外し、ネジを露出させます。
次にここからがクレセント錠のネジを外していくことになるわけですが、この時重要なポイントとなるのは、続けて2つともネジを一気に外してしまわないということです。というのも、クレセント錠を設置している場所というのは、裏側にネジ穴が切られている裏板というものが当てられており、両方とも一気に外すとこれが裏側に落ちてしまって取り出すことができなくなってしまう可能性があるためです。そのため、ネジはまず上のものを取り外し、一旦クレセント錠を横に傾けます。その上で一度上のネジ穴にねじを仮止めさせ、裏板の落下を防ぐようにしてから下のネジを外すようにしましょう。上で止めてあるため、下については仮止めを行っておく必要はありません。
3.2新品の取り付けは外す時の逆順で
古いものを取り外すことができたら、今度は取り付けの作業を行っていくことになります。取り付けは前述した取り外しの方法を逆順に行っておくので良いのですが、やはり注意するべきなのは「同時にねじが外れているタイミング」がないようにすることです。そのため、まずはクレセント錠の下側のネジを止め、その上で上に仮止めしていたネジを外し、改めて上のネジを取り付けるようにしましょう。基本的にはこの点にだけ気をつけていれば、クレセント錠の交換は難しいものではありません。
3.3可変寸法の調整は実際の噛み合わせを試しながら
もし交換先となるクレセント錠が可変寸法のものである場合については、細かく実際に試しながら調整を行っていくようにしましょう。実際に寸法通りに合わせているつもりでも、いざつけようとするとズレが生じてしまっている可能性はあります。裏板に対して試しながら、ビスピッチを調整して取付作業を行っていくようにしましょう。実測による調節が適切な状態になっていることが重要です。
④錠本体の交換だけじゃない! 窓サッシ周りの交換箇所
また、クレセント錠だけがサッシの交換を行うべきポイントというわけではありません。場合によっては受け具の側の交換を行っていく事も考えると良いでしょう。どうしても寸法が合わないような場合についてはこちらを合わせて交換することによって対応できるようになる可能性があります。こちらについても基本的にはアルミサッシに対してネジで止まっているため、特別なものが必要なわけではありません。留め具についてもある程度場所を調節しながら設置ができるようになっているため、その点について注意しながら、適切な位置に設置させることが重要です。
まとめ
それでは最後に、クレセント錠の交換に関するまとめを紹介します。クレセント錠の交換を行う場合、まず重要なポイントとなるのはできるだけしっかりと寸法を測り、交換先となる鍵として適切なものを選択することにあります。サイズの違いがあると上手く裏板のネジ幅と合わせることができずに交換を行うことができない場合があるためです。
また、防犯性を考えるのであればクレセント錠だけではなく、周辺器具を使用するなどして窓全体の防犯性を向上させることを考慮していくことも重要になるでしょう。防犯上の1つのポイントとなるのは、5分間空き巣に時間を消費させることができるかどうかです。防犯性が高い窓になると侵入を諦める可能性が高くなり、被害を抑えることができるでしょう。